「ハッピーエンドってなんだろうね?」  (お題:「ハッピーエンドってなんだろうね?」「星が美しい夜には、なんだか泣きたくなりますね」)

 むかし、むかし、ある所に桃太郎という少年が居ました。

 彼は皆を困らせる鬼を退治し、その後、幸せに暮らしましたとさ。

 めでたし、めでたし。

 

 むかし、むかし、奇形児や異端児は鬼として山に捨てられ、その生き残りは、生きる為に村を襲ったとさ。

 

 むかし、むかし、ある所に、鬼の子どもが居ました。

 皆に隠れるように言われ、事が終わった後に、岩陰いわかげから出て来た鬼の子どもは「桃太郎という化け物が皆を殺した」と、一人、泣きましたとさ。

 

 ちょっと昔、人間という自分勝手な生き物がいました。

 悪い人間たちは地球に棲む様々な生物を虐めます。

 そこに立ち向かったのが、異星人。


 人類だけを殺す特殊な白い粉を世界中にばらき、一月の間に、ほとんどの人類は滅びました。

 人類が滅びた後、私達は動物たちが争わなくてよい様に、植物を消化できる体に改造し、光合成もできるようにしてあげました。


 人類にしいげられていたアンドロイドたちも解放され、世界は平和になりましたとさ。

 めでたし、めでたし。

 

 ある所に、ひっそりと生き延びた鬼の子どもが居ました。

 その子どもは…。

 

 「ハッピーエンドってなんだろうね?」

 僕は海まで続く、坂の上の公園で、一人呟いた。

 答えるものは誰もいない。なんせ、全て滅びてしまったのだから。

 

 この公園も昔はアンドロイドや動物が楽しく遊ぶ場所だったのだと、この世界を終わらせた彼が言っていた。


 そんな事は知っている。

 なんせ、僕はここに人間の病院がある頃から、生きているのだから。


 世界を滅ぼした彼は、幸せそうだった。

 そして、同じく、幸せそうな、アンドロイドの女性と、青い小鳥を連れ、僕の前を去って行ったのである。

 

 滅ぼそうとした相手と笑顔で一緒にいる彼も分からない。

 同じ種族を滅ぼした相手と仲良くしているアンドロイドや、小鳥の事も分からない。


「…でも、幸せそうだったなぁ」

 僕は一人、闇夜に輝く星たちに手を伸ばす。

 結局、僕の手元には何も残らなかった。


 世界が死の灰に包まれたあの日、僕は悪の組織に勧誘され、実験室にいた。

 そこで体を改造され、簡単には死なない体になったのだ。


 まぁ、その直後、悪の組織は、宇宙から放たれた光線で、僕もろとも吹き飛んでしまったわけだが…。


 僕は死ぬ事が無いのだろうか?

 これはハッピーエンド?

 良く分からないが、少なくとも今の心境は、幸せからほど遠い物だろう。


「星が美しい夜には、なんだか泣きたくなるの」

 不意に、彼女の声が聞こえた気がした。


 僕を好き勝手に引きずりり回し、もてんだ悪魔の化身だ。

 あの日以来、顔を見てはいないけど…。


 そんな考え方をして、声まで聞こえるという事は、彼女に死んでいて欲しくないと、僕が心の底から願っているのだろうか?

 

 いや、僕は信じてるんだ。

 もうあの日から、数世紀はってしまっているけれど。


 あの町並みはもうないけれど。

 人類の殆どが滅びてしまったけれど。

 それでも、どこかで生きていているって…。

 

 彼女は「消えたのに気づかれないなんて寂さびしくない?」と、聞いてきた事があった。


 これだけ生きてきたにもかかわらず、やはり、僕はその言葉に共感できない。

 今、この状況で消えられたら、どれだけ清々する事か。

 

 「一人生き続ける方がよっぽど寂しいよ」

 僕が星空に向かって呟くと、突然、彼女の顔が視界に映り込んだ。


 「くふふふっ」

 とうとう、頭にまでガタが来てしまったようだ。

 自然と笑いがこぼれる。

 

 「好きだったんだなぁ」

 僕は彼女の顔に手を伸ばす。

 触れられないと分かりながら…。

 

 「…ちょっと、何よ」

 え?

 「…触れた?」

 僕は驚いて手をひっこめた、手の感触を確かめる。

 

 「何、寝ぼけてんのよ、アンタ。目の前にいるんだから触れるに決まってるじゃない」

 彼女がいぶかし気な表情で僕を見る。

 

 「な、なんで、君が…」

 僕はゆっくりと彼女に手を伸ばす。


 「さぁ~て?あんたの頭が壊れちゃったのかもね?それとも、体を改造されて生き残ったとか?…それか、案外アンタの夢の中で、覚めたら何にもない日常なのかも…。って!何よその手は!やめなさい!主導権はいつも私にあるんだから!」

 そんなのどうでも良い。


 この際、主導権なんて関係ないし、彼女がどうして此処いるかなんて些細な問題だった。

 僕は身を起こすと、彼女をギュッと抱きしめる。

 …温かかった。

 

 「…全くもう。泣き虫さんなんだから。…今日は特別だからね」

 彼女はそう言うと、僕の頭を撫でながら、抱擁を返してくれる。


 涙が止まらなかった。

 

 この気持ちは、夢でも、死後でも、現実でも、仮令たとえ、ハッピーエンドじゃなくたって変わらないだろう。

 

 僕は今、幸せだ。


==========

※おっさん。の小話


 最後に、"僕"は"彼ら"の気持ちが分かったのかもしれませんね。


 相手がどんな見た目であろうと、勢力であろうと関係ない。

 彼は彼で、彼女は彼女。一緒に居られるだけで幸せなのです。


 まぁ、それが彼らの答えなのかどうかは、作者ですら分かりかねますが…。


 何はともあれ、これにて、一旦、一段落です。


 バラバラで書いたお話。

 頑張れば案外繋げられるものですね。


 テーマが心に統一されていたせいもあるでしょうが…。


 さて、次はどんなお話を書きましょうか…。

 

 皆様のリクエストお待ちしております。

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