第10話
そういえば・・・ナノハはどうしているだろう。先程は確認し損ねたが、キャンピングカーにちゃんと乗っているだろうか。私は再びナノハへのコンタクトを試みる。周りには闇が深く漂っている。しかし、暗闇はむしろ私にとっては好都合だ。そろそろとキャンピングカーに近づき、後方の窓から中を覗く。よく見えない・・・何故なら、先程の父親が車内を隠すように背中を見せて立っていたからだ。うむ、どうするか。私は小石を拾い、キャンピングカーの上へと投げる。
ガツン
突然頭上からした音に警戒し、身構える父親。そのまま頭上を見つめ、私の覗いていた後方の窓まで行き、外を見る。まあ何もないだろう。何故ならその間私は、すでに移動していたからだろう。今は車の側面の、少し小さめの窓のところにいる。そして今のうちに、どれどれと中の様子を確認した。
・・・誰もいない。どういうことだ?母親とナノハはどこへ行ったのだろう。
嫌な予感がする。私は再び付近の捜索をすることにした。今度は細かく、木陰や倒木している木の下もくまなく探す。そして暫くして、不自然に落ち葉が積んである場所を発見した。私は丁寧に落ち葉を払い除けていく。そこには・・・気を失っている母親と、重傷を負ったナノハがそれぞれ横たわっていた。私は急いでナノハの首に指を当て、脈をとる。よかった、生きていた。隣の母親は無傷だ。?何故だ?いや、それよりも・・・
私は自然エネルギーを集め、ナノハに送り込む。気は失っているが魂が離れたわけではないため、傷さえ治せばすぐ意識を取り戻すだろう。・・・と思っていたのだが、傷が癒えない。何故だ!どうして・・・
!!
まさか・・・
以前一度だけこういうケースがあった。やはり私のお気に入りを治そうとしたときだ。うむ、どうも私が気に入る人間達は、霊感がすこぶる強いらしい。とは言え、今までで気に入った人間と言えばナノハとあの女だけなのだが。ともかく、私はあの時も彼女を治そうとエネルギーを送り込んだのだが、全く回復しなかった。おそらくだが、彼女の持っていた異常なまでの霊能力が、私のような悪しきものからのエネルギーを弾いてしまうのだろう。自然エネルギーとはいえ私のエネルギーで集めたもの。無意識に拒絶してしまうのだ。ということは、ナノハも彼女と同等の資質があるのかもしれない。
しかし、これは困ったぞ。このままではナノハが息絶えてしまう。治す方法が無いことはないのだが、それをやってしまったらナノハは・・・彼女の二の舞になってしまう。・・・どうすればいい!
「ピエロ・・・さん?」
弱々しい声が聞こえた。ナノハだ。うっすらだが意識を取り戻したらしい。
「あのね・・・お父さんと、お母さんと一緒に・・・散歩してたらね・・・急にお母さんが怖くなって・・・あたし逃げたの。そしたらね・・・今度は・・・お父さんが怖くなって・・・」
一生懸命、私に伝えようと頑張って話すナノハ。もっと言いたいことがあるのだろうが、またプツリと意識を失ってしまう。
かわいそうに・・・
辛うじて命は繋ぎ止めているが、このままでは助からないだろう。もしかすると直ぐに病院に運べば或いは・・・
しかし、今のナノハの話であらかたわかったぞ。・・・そういうことだったのか。
・・・
・・・
やってくれたな・・・
奴は私の逆鱗に触れたのだ。決して許すことは出来ん!
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