第7話
「いない・・・だと?」
私は例の現場まで来ていた。そして、隠していたはずのあの女がいなくなっているのを確認したのだ。ああ、面倒だな。悪い予感は的中していたというわけだ。この確認で確信した。どうやらやはり、私の他にも化け物がいたようだ。こいつは私よりも霊体に近い。つまりは実体が無いということだ。そう、そいつはあの女に憑いていた。絶命しそうになったあの時に、一度は女から出たようだが、私が回復させてしまったばかりに、また入ってしまったのだろう。私が場から離れたのを見計らって・・・
私は再びキャンプ場に戻る。餌達が心配だからだ。まだ、取り憑くという能力以外、こいつがどのような力を持っているかわからない。しかし、特性は邪悪であることは間違いないだろう。つまりは人間の命を奪う輩だ。そして何より、こいつも私の存在に気付いている。食事の邪魔をされる前に早く対処をして、こいつを封じ込まなければ。
キャンプ場付近に辿り着いた私は、慎重に周りを見て回る。何か奴が戻ってきた痕跡があるかもしれない。そして、またしても私の予想は当たっていた。四人家族が乗ってきたキャンピングカーの後ろに立つ木々の影に、あの女が倒れていたのだ。女の首に指を当てる。脈は・・・かろうじてある。私は、またしても女を回復し、空間同調を使って姿を隠してやる。そして、しばらくその場に佇む。奴は戻ってこない。ということは、別の誰かに憑いたのだろう。
はぁ・・・本当に面倒だな。
というのも、誰に憑いているのか、見た目だけではこの私でもわからないからだ。もしかすると、私の力が全盛期の頃ならわかったのかもしれないが・・・
私は、キャンプ場全体が見渡せる位置に移動する。一通り遊び終えた餌達が、夕食の準備をし出す時間帯だった。
この中にいる。
それは間違いないのだろう。だが、見分けがつかない以上、取り敢えず観察するしかない・・・
ナノハは大丈夫だろうか。私は少女の姿を探してしまう。・・・見つけた・・・よかった。見たところ、楽しそうに夕食作りの手伝いをしている。あの無邪気な笑顔を見て、私はホッとしてしまう。ちなみに私は、生き物で言えばどちらかというと雌に近い。だからだろうか、お気に入りに対して感じるこの母性は・・・以前はこれが命取りになったというのに。やれやれ、私は学習しないのだな。
お気に入りの確認を終えた私は、また他のキャンプ客に集中する。今のところ怪しい動きをしている輩は見当たらない。
・・・?
ん?大学生が二人いないぞ。いつの間に?勝ち気そうなショートヘアの女と、なよなよしい長身の男がいなくなっている。私がナノハに意識がいっているほんの少しの、僅かな隙をついて姿を眩ませたのだ。
いかん・・・
いなくなった二人の内、どちらかに取り憑いていたのだ。探さなくては。私はひとまずキャンプ場を離れることにした。きっと人目のつかない、林の奥でどちらかがどちらかを手にかけるつもりだ。・・・そうはさせるか!
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