第5話 倒す
白い頭巾の少女は、右手のナイフを投げる。そこは、死体の眉間…、前のナイフの真横に刺さる。
投擲の力は頭へと伝播し仰け反らせる。
瞬の隙き。
短剣を右手に持ち換え鞘を外す。
現れた鈍い銀色の輝き。
「今度は、痛いわよ。」
言うが早いか、踏み込むと仰け反りから回復していない死体に斬り付ける。
「グォがごゲグ!」
死体の上げたのは、人の悲鳴では無く音。
更に傷口から立ち昇る白い煙。
「やっぱ、これじゃないとね。」
短剣を見詰める目は、まるでお洒落な小物を見ている少女のようだった。
死体でも苦痛を感じるのか、傷口を押さえる。
今度は感情があるかの様な反応。
怒り。
両手を振り上げると、白い頭巾の少女へ襲い掛かる。
そして、交互に腕を振り下ろす。
白い頭巾の少女は前になった足で地面を蹴り、右構えと左構えを入れ替えながら下がり避ける。
左腕の振り下ろし、
「えい!」
呼吸を合わせ肘を短剣で受け止める。
それはその勢いのまま、まるで抵抗等ないかの様にスッパリと斬り落とした。
『ボトリ。』
斬った時とは対象に、落ちる音は大きかった。
肘から先が無くなり、がら空きになった死体の左側に回り込み、
「やっ!」
掛け声と共に短剣に左手を添え死体の左脚を斬る。
『ボタリ。』
重い脚は先程よりも大きな音を上げる。
『ドスン。』
均衡を崩し仰向けに転がった。
起き上がろうと藻掻く死体の右腕を白い頭巾の少女の左足が踏む。
「ご主人様!」
男の子が、助走を付け投げる。
今度は長さ50cm程の筒に取っ手が付いているモノ。
短剣を左手に逆手に持ち換る。
またも振り向かず右手で受け取る。
くるりと回し、構える。その筒は大型の銃の様にも見えた。
死体の胸に先端を押し付けながら、左手も短剣と共に前側に付いた取っ手を握り、
「その魂。人に還(かえ)りなさい。」
引き金が引かれる。
神父は、それが祈りの言葉に聞こえた。
筒は後ろ側から派手に煙を吐き、轟音を轟かせ先端から太い杭を打ち出す。
『ズゴッ!』
太い杭は死体を地面に縫い付ける。
しばらく痙攣(けいれん)していた死体は動かなくなり、元の死体へ戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます