第6話 縫う


「終わり。」

 筒から手を離し顔を向けたのは市長を始めとする男達。

 左手の短剣を右手に持ち換えながら、歩きだす白い頭巾の少女。


 今の光景を目の当たりにした男達は、近付く白い頭巾の少女に恐怖し固まる。


 無言で手前の男を左手で押し退け、その先に居た市長へ短剣を向け突き出す。


 傷の痛みで藻掻いていた市長も、それに気が付き、

「こ、殺さないでくれ…。」

 引き攣(つ)った顔で懇願した。



 神父は間に割って入り、

「殺さないでください。」

 自らを盾とした。


「殺したいの?」

 白い頭巾の少女の言葉が理解出来なくて、困惑する神父へ、

「早くしないと、その人もああなるわよ。」

 左手を耳の横まで上げ、親指で後の死体を指した。


 自分でも納得かたのかは判らないが、白い頭巾の少女の前から下る神父。


 市長の側へ行くと、手にした短剣で傷口周りの服を切り裂いた。


「結構、深いわね。」

「本当だ。」

 いつの間にか側に立っている男の子は、白い頭巾の少女の差し出された左手に小箱を乗せた。


 白い頭巾の少女は小箱から針と糸を取り出すと、糸の先を針穴に通した。


「これを噛んでください。」

 男の子は、またいつの間にか取り出した布を市長の口の前に出していた。


 市長が噛むのを確認すると、

「押さえて。」

 その意味が判った男達は従った。



「行くわよ。」

 白い頭巾の少女の言葉に頷く市長。その目には、これから起きる事への怯えが見て取れる。


「グフッ!」

 白い頭巾の少女は、容赦無く針を深く挿し込み傷口を縫っていく。

 針を挿す度、糸を通し引く度に市長の喉が悲鳴の音を出す。


 人間とは、こんなにも力を出せるものなのだと思い知りながら神父は市長を押さえる。


 その中で気が付く、

(あの糸は光っているようだが? 何か特別なものなのか?)

 一瞬、気を取られた瞬間に力の均衡が崩れる。


「気を抜かないで!」

 叱咤の声。

「すみません。」

 白い頭巾の少女に謝った。


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