Round 3 ましろ、激戦
ましろ、『気』のトレーニングを開始する
トーナメントが開始されて数日が経過。
幾人もの挑戦者が、トーナメントを勝ち進んでいる。
龍子も、次の対戦を今か今かと待っている様子だ。トレーニングにも熱が入っている。
「それは、『砕雲掌』じゃな」
道場で蒼月ワコに事情を説明すると、そう教えてくれた。
「そこに立ってみい」と言いながら、ワコがましろをリング中央に立たせる。
ましろの目の前で、ワコが腰を落とす。
「いくぞい」
トン、と軽く腹に掌打を打ち込まれた。
それだけで、ましろの身体が後ろへフワリと跳ぶ。
長谷川茜にやられたときとは威力がまるで違う。が、原理は同じだと身体が感じ取った。
「合気道みたいなモノですか?」
立ちながら、ましろが尋ねる。
「厳密に言えば、古武術じゃな」
蒼月流は、『気』を練り上げて、相手に打ち込む技を開発している。
体内のエネルギーである『気』を練り込むことで、肉体の強化や体調の維持、そして常人を超えた技を会得できるという。
実に、現実離れした技術であるが、実在すると言われると、信じるしかない。
「龍子は会得できたんですか?」
「あやつの跳躍力は、気の力をほんの少しコントロールしておるのじゃ。が、相手に当てる術は、本来ならば何十年もの修行が必要なのじゃ」
それが砕雲掌であると。
「けど、茜の父親は、短期間でそれを会得しちまったんだ」
ベンチプレスをしていた龍子が、横から口を出してきた。
ならば、娘である茜が技を引き継いでいる可能性が高い。
「茜も、父親が早くに病死しておらなければ、ええ人格者となっておったろうに。母親があれでなければのう……」
茜の母親とは、いったい?
「龍子、仕事が入ったわよ」
大永マキが、手帳を片手にジムへ入ってきた。
そんな龍子に、なんと格闘アイドルの仕事が舞い込んできた。
スポーツ用品を紹介する、雑誌のグラビア撮影だ。販売会社から指定された水着を着て行うそうである。
「あたしがグラビアだぁ?」
「贅沢言わないの。格闘技を世間に広めるチャンスなのよ。ただでさえ、マニアにしか受けないジャンルなのに」
そう言われると、さすがの龍子も折れざるを得なかった。
その後、ワコのトレーニングは、気を練り込む術をメインに組み込むことに。
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