鬱エンド「せつないSF」

「もし……もし……」

「優ちゃんか、ごめん、今日は本当にごめん。俺謝るから、許してもらえるまで謝ってやるぞ、何回だって」


 言い過ぎだろうか?かえって脅迫めいたようにも聞こえるかもしれない。

 だが、これは嘘偽りない俺の本心なんだ、伝わってくれ!


「あ……あ……はは、いつもの優さんですね。」

「優ちゃん!」

「誰でもイライラすることってありますよね。私もどうかしていました」

「そ、それじゃあ、俺のこと許してくれるのか?」

「そうですね……今日は最期の日だからって私のほうこそごめんなさい」

「最期の日だって?」

「あれ?優さんテレビとか見てないんですか?でっかい隕石があと10分で落ちてくるって騒いでますよ」


 俺は反射的にテレビをつけて、チャンネルを回した。

 しかし、すべてのチャンネルを制覇してもそんなニュースはやっていない……。


「どこでもやってないぞ?」

「おかしいですね……こんなときにツッコむのも何ですが、今って何年ですか?」

「2018年……だけど」


 何を言っているのだろう?この子は?とは思ったものの、俺は素直に答えた。


「そう……ですか……こちらは2068年です」

「えっ?」

「逢えるわけなかったんですね、私たち」

「優ちゃん……」

「……でもいいんです。もうそんなこと……最後にひとつだけ、お願い聞いてくれますか?」

「……いいよ」

「……このまま、電話、切らないでください……」


 それから10分間、それまでのことを忘れて、俺たちは、他愛のないおしゃべりを続けた。もちろん、いつもどおり、大抵俺が反応に困ると、助け舟というか、流れを上手く造ってくれるのは彼女だった。


「なんだか空が明るくなってきました……そろそろみたいです」

「……」

「最期に優さんとお話しできて私……」


 プツリと電話が切れた。

 俺は、――

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