§13 小さい先輩のお願い

「俺も魔法は使えないしさ。かといってこの世界のことをそれほど知っている訳でも無いし。まあ課外活動は自由だから、ゆっくり考えればいいんじゃないか」


「そうだよね。ヘラは?」


「私も様子見ですわ。もう少し詳細がわかってから考えるつもりです」

 そうだよな、と思った時だ。


「そう言わずにちょっと力を貸して欲しいのだ」


 知らない声がした。

 辺りを見回す。

 見覚えのない小学生風の女の子がいつの間にか俺達の横に来ていた。

 身長は大分低いし体型的にも小学生。

 ただ制服は明らかにうちの学校の制服だ。


「あれ、アン先輩」

 ヘラが声をかける。

 どうやら知り合いらしい。

 しかし先輩か。

 どう見ても小学生、それもせいぜい四年生程度に見えるけれど。


「アン先輩はここの三年生です。長寿種と強靱種の血が両方出た結果、成長がすこぶる遅いのですわ」

 俺達が質問する前にヘラが説明してくれた。

 なるほど、そういう事もあるわけだ。


「説明ご苦労。しかし毎度毎度小学生扱いされるのも悲しいのだ、実際」

「それはまあしょうがないと思いますわ。その見た目ですから」

 何気にヘラ、丁寧な語調だがずけずけ言っている気がする。

 まあそれだけ仲がいいのだろう。


「それでアン先輩、今日はどうしたのですか」

「いや、レマノ姉から手紙が届いてな。他世界から落ちてきたばかりの生徒を後輩としてそっちに送ったから宜しくと。そんなもので様子伺い兼お願いに来たのだ」


「レマノさんのご姉妹ですか」

 それにしては随分見た目が違うなと思う。

 あっちは立派に大人だったし。


「いや、長寿種は年を取っているとみられるのを嫌うのだ。なので自分より目上の血縁はみんな姉か兄と呼ばされるのだ。実際にはレマノ姉は……」


 ドン!

 大きい音がすぐ近くでした。

 一瞬だけ炎が上がったように見える。

 何だ今のは。


「レマノ姉は魔法が得意。なのでこれ以上は言わない事にするのだ」


 何が起きたか何となく俺は察した。

 レマノさん、馬車で半日かかるような場所の会話に釘刺し攻撃かよ。

 でも確かに与えられた知識の中に今の魔法と遠見の魔法が確認出来た。

 なかなか怖いお姉様?だ。


「何だ何だ」

 アルバレートやメルクールがのぞきに来た。

 今の爆発が気になったらしい。


「何でも無いんです。ちょっと故郷の姉が魔法で癇癪おこした模様で」

 ヘラがそう弁解。

 何だそれ、という空気を醸し出しつつも何となく皆さん納得した様子。

 それだけ魔法というものが一般的なのだろう。


「本題に入るのだ。実は技術研究会が危機に瀕しているのだ。

 ここ数年芳しい実績が無くてこのままでは廃会と言われているのだ。

 そこで貴殿の手を借りようと思った訳なのだ」


 理由は理解できた。


「でも俺が何か出来るという事は無いと思いますよ」


「いや、実は色々な世界から落ちてきた未知の物品があるのだ。うちの会にもいくつかあるのだが、用途も使用方法も全く理解できないのだ。その分析を少しだけでもいいから手伝って欲しいのだ。

 貴殿は技術の進歩した世界から落ちてきたと聞いているのだ。ならば修理は出来なくとも用途くらいはわかるものがあると思うのだ。頼む、という事で」

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