第5話 六月晴れ曜日のcafe

 

 6月。



 梅雨の時期。



 わずかな晴れ間に降り注ぐ、強く透明な日差し。



 良く冷えた白ワインをペリエで割ってちょうだい。



 かるい、喉越しの良い飲み物がいいの。



 スイスイのみながら、火曜日の午後。



 触り心地の涼しげな麻のファブリックで包まれたソファ。



 しっとりと素足に馴染むオーク材の床。



 靴を脱いで上がるカフェ。



 他のお客さんの来ないカフェ。



 それは、お友達のあいだだけの、“カフェごっこ”。



 お友達が経営する、あの街の北欧家具のセレクトショップ。



 その最上階のガラス張りのテラスハウスで、“カフェごっこ”。



 平日の昼間から、素足のままで。



 街を見下ろすこのソファで、しどけなく。



 小イカのフリッターにレモンを絞って。



 フォークを差すとぱっきり割れる、鮮度の良いレタスでこしらえたサラダ。



 長いスカートのなかで、脚を組んで。



 音楽はかけないでちょうだい。



 ビルの向うを飛ぶヘリコプターの羽音と、



 窓から入ってくる、湿度の低い風だけがBGM。



 素敵な気分。



 労働者の諸君、と、車寅次郎風に言ってみる。



 今日も額に汗して働いているか?



 おてんとう様は諸君らの勤労をじーっと見ているぞ。



 くさらず、愚痴らず働きたまえよ。



 あたしはここで、ホロ酔いだけれどね。



 うふ。


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