悲恋(こい)と涙と嘘

Darsan

鬼と呼ばれた女の悲恋(こい)

昔々、えっと、どれくらいじゃったかのう……。

だいたい、900~800年くらいの話。

話の舞台は京都、丹波の山辺りを拠点に、あいつはおったそうな。


「へへっ、今日の獲物は良いものだ。」


彼女の名前は「伊吹翠いぶきみどり」。

盗賊をしている、見た目が五尺(150cm)ぐらいの背丈に、蜂蜜色の長い髪をしていて、瞳は翡翠色をし、服装はボロボロの着物を着ている。


彼女の日課は、荷車から物にくすねたり、盗んだりする。


そんなある日、彼女はいつものように、

「さて、荷車から物を盗むか……。」


と、茂みに隠れて、


「おい、荷物を置いてゆけ、そうすれば命だけは助けてやる。」


と刀を抜き、その人物を脅したが、男は


「……なんて、綺麗なんだ。ふつくしい、結婚したい。」


そう言って、男は翠に一目惚れした。


「はぁ? お前は何を言っているんだ? 私はお前を脅しているのだぞ。それで惚れるとか、アホか?」


そう言った翠だが、その男の真っ直ぐな瞳と、気持ちに根負けして、


「……分かった、まずは私が盗賊だとバレないように、ここではなく、別の場所で会いましょう。ついてきなさい。」


「えっ、いいんですか。でも、何処へ?」


「……、こっちよ。」

そう言って、翠は男を連れて山奥へと行く、着くとそこには、小さな一軒家があった。


「ここが私の拠点。ここで、会いましょう。そう言えば、名前聞いてなかったわね。名前は?」


「自分ですか? 自分は『曽田密次そだみつじ』といいます。商人をしています。」


「ミツジね。私は『伊吹翠』。」


その後、二人は数日おきに、会う様になった。

時に喧嘩し、時に仲睦まじく、二人の仲は段々と深まっていった。


そして、付き合い始めて二年目のある夜、密次の方から話をかけた。


「翠さん。僕と結婚しましょう。もし、よかったら、約束しましょう。自分はあなたが盗賊なので、自分よりも強いです。だから、『涙を見せないでください』。翠さんは?」


「私? わたしは、お前は正直者だからな、私に『嘘をつくな』。これでいいだろう。」


二人は、その言葉を約束した。だが、その約束を最後に、密次は行方が知られずその代わりに斬殺死体が見つかった。翠はある情報屋から聞いてその死体が埋まっている、墓に行った。


「この、バカっ! やっぱり、私以外のヤツとデキているじゃないか……。熊境のところの娘と。この、大嘘つき、裏切り者、軟弱者!」


翠の目には、涙が浮かべていた。


後日、翠は古い知人の情報屋から熊境の屋敷の情報を手に入れた。

そして、

「翠姐さん、本当にやるのかい? ……アッシは止めませんが。」


「私はやるよ。」


とある屋敷の門の前

「知ってるか? 鬼のヤツ泣いたってよ。最愛のヤツ亡くしてさ。」


「そうか、アイツもかわいいところあるのだな。」


ワッハッハッと門番達が笑うと一人の女が来た。


「こんばんわ、熊境の屋敷はここですか?」


「そうだが、それより俺達と一緒に一晩やらないか。」


「ありがとう、じゃあいきなりだけど。」


そう言った彼女は、刀を抜き、いきなり門番の一人を斬った。


「じゃあ、殺すけど、それが遺言でいいかな?」


「ヤメロ、死にたくない! 死にたくない!死にたく……。」


ザシュ……。


「……さて。」


女は屋敷に入った。


「ヤメロ、こっちに来るな……。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


一人の男が倒れると、一人の女が姿を現す。


「あんたが密次をやったのか?」


「……そうだが。」


「……じゃあ――。」


翠のセリフを聞き入れた熊境勇は……。


その後、二人の行方は知らない。


数年後


「いいんですか? あなたがこんなところに来て。」


「……久しぶりだね、。私はこんななりになっちまったよ。――じゃあね。」


そう言って、女は大勢ののところへと戻っていった。


この話は昔々の悲恋こい物語。一人の鬼と

呼ばれた女と、一人の商人の恋のお話。





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