第89話 タブー

「皆! 大変よ! これを見て!」


 生徒会室に着くなり桃やん先輩が開口一番、俺達に血相を変えてPCの画面を指し示す。

 俺達は訳も分からずPCの前に集まった。


「え? 何で?」


 表示されている画面を見た俺達は言葉を失った。

 目の前のPC画面には生徒会会報の原稿を保管していた共有フォルダーが表示されている。

 新年度の挨拶や収支報告それに行事予定等の原稿ファイルは存在するけど、一つ足りない。

 そう俺達の想いの結晶、この数日間この為だけに頑張った、違うな俺の親父と学園長からの25年の時、いやそれも違う、この『刻乃坂学園』創立からの創立者の旦那さんの70年分の想いを込めた集大成である部活紹介の原稿ファイルだけが無かった。


「どう言う事ですか? 桃山先輩!」


 そう言って桃やん先輩を見ても、桃やん先輩自体困惑の表情で首を振っている。


「あたしが生徒会室に入った時には、何故か既に全てのPCが起動してたんだよ。驚いて確認すると、これ見よがしに作業フォルダが開いていたんだ。そしてそこには部活紹介のファイルだけが消えていて……」


 何で? 誰がそんな事を? しかも見せ付けるように?


「もしかして製本データも?」


 桃やん先輩は無言で頷く。


「それだけじゃないよ、部活紹介に纏わる画像ファイルや音声データ、それにボイスレコーダー内も全部クリアされていたんだよ」


 桃やん先輩は困惑の表情のまま、そう口にした。


「くそ! どう言う事なんだ? 誰が……、まさか! 創始者が?」


 学園長が創始者に嗅ぎ付けられたって言っていたけどこう言う事なのか?


「え? どう言う事? 牧野くん何か知ってるの?」


「あぁ、そうか、桃山先輩はまだ知らないんでしたね。どうやら創始者が俺達の計画に気が付いたらしいんです。恐らく美佐都さんと橙子さんもそれで……」


 俺の言葉に桃やん先輩は目を見開いて口を手に当てている。


「そうだ! 消されただけなら復旧ソフトとかで回復出来るんじゃ?」


 確かそう言うソフトが有ったはず!

 俺はフォルダを閉じネットからそのソフトを落とそうとした時、デスクトップの真ん中に見慣れないソフトのショートカットが配置されていた。

 こんなショートカット、このPCに有ったかな?

 何のソフトだ?


「!!」


 そこに書かれていたソフト名は『ファイル完全削除ツール』。

 これってもしかして?


「桃山先輩! こんなソフト入れてました? しかもこれって削除したファイルを消す奴なんじゃ? あっ! そんな、もしかして!」


 これも消したと言う事をアピールする為か!

 くそ! なんて手の込んだ嫌がらせだ。


「他のPCを確認して下さい!」


 皆が各々使用していたPCの前に行く。

 俺は自分が作業で使っていたPCを確認した。


「ダメか!」


 分かってはいたが、ご丁寧な事にTEMPフォルダや一時ファイルフォルダにも一切痕跡は見当たらなかった。

 どれだけ丁寧な仕事嫌がらせなんだよ!

 怒りのあまり、逆に変な笑い声が出てきて吐き気がする。


 あっ! 写真データなら萱島先パイのカメラに残っているんじゃないか?


「萱島先輩のカメラにデータが残っているかも! すぐに連絡を!」


 インタビューは最悪俺とポックル先輩の記憶で書ける。

 それに画像データが有れば、元の完成度は無理かもしれないけど体裁は整えられるだろう。


 ガラッ―――


「はわわわわ、ど、どうしよ~」


 光が見えたかのように思えた最中、急に扉が開き情けない声と共に哀れな小動物みたいなのが生徒会室に入ってきた。

 それは、生まれたての小鹿みたいに足をプルプルさせながら這うように俺の元に近付いてくる。


「うっうわなにこれ?」


 何だこの生物?

 顔を見ると何処と無く見覚えが有るのだが、俺の知っているどの人物像に当てはまらない。


「うぅぅぅ牧野くぅぅん」


 その生き物は顔をクシャクシャにさせながら俺の足にしがみ付いてきた。


「なななになに?」


 うわ!怖い!


 ムニュ。


 !!


「あっ! もしかして萱島先輩ですか! どうしたんですか」


 この感触は忘れる筈も無い、俺にしがみ付いて来ているのは萱島先パイその人だった。

 メガネしてないから分からなかったよ。

 どこかに落としてきたんだろうか?

 しかし、丁度良かったのだが、この状態はただ事じゃない。

 いつものどころか、人としての尊厳さえ無くしてしまったような狼狽え振りだ。


「私の命がぁぁふぉふひゃぁ」


 とうとう大声で訳の分からない言葉を発しながら泣き出して俺の脚に真正面からしがみ付き顔を埋めてきた。

 って、そこに顔を埋められるとビジュアル的にヤバイから!


 あぁ、そんなに強く顔をグリグリこすり付けないで!


「ちょっと落ち着いてください萱島先輩!」


 周りの数人が、このビジュアルが醸し出す異常アブノーマルさに気付き出したので、俺は慌てて萱島先パイを引き離した。

 この体勢だと丁度自然に腰は引き気味になるので一安心だ!


 泣きじゃくっている萱島先パイを何とかなだめると、やっと理解出来る言葉で喋ってくれた。


「部室に置いてたカメラのデータが消えてるんだよ~!」


 この言葉には生徒会室の皆が言葉を失った。


「どう言う事なんですか? 部室に置いていたって、持って帰らなかったんですか?」


「だってあれは部の備品だもの。そりゃ置いて帰るよ。月曜日の放課後にアレとかアレをプリントアウトしようと思っていたんだ。フィルムなら消耗品だし自宅で現像出来るから持って帰ったのに……。だからデジカメは嫌いだ~」


 そのアレとかアレってドキ先輩のキスとか俺の目を瞑って歯を食いしばってる恥ずかしい写真だから少し助かった。


 いや、そんな場合じゃない!


「コピーとかは取ってなかったんですか?」


 俺の問いにまた大粒の涙を浮かべてコクコクと頷く萱島先パイ。

 そりゃ、こんな事になるなんて思わないか。

 しかし、この人は本当に写真によって精神状態が左右されるよな。

 こうな風になってしまってる以上、この人の知恵は借りられそうもない。

 何か、何か方法は?


「あっ! じゃあ! 印刷所への依頼メールは? って、有る訳無いか……」


 桃やん先輩は悲しそうに頷いた。


「それ所か、印刷所から『キャンセル承りました。個人情報保護の為、完全消去を行います』と言うメールも届いていたよ……」


「くそ! なんて事だ! どこから漏れたんだよ」


 ああ分かってるよ! そんな事が分かる人なんて居ない事を!

 苛立ちと恐怖、それらから来る焦りだけが生徒会室を支配していた。


 ガラッ―――



「皆集まってる?」


 その時、生徒会室の扉が開き千歳さんが入って来た。


「まーちゃん遅くなった! ごめん」


「牧野くんお待たせ!」


「光一大丈夫か?」


 後ろからポックル先輩とウニ先輩、そしてドキ先輩の千林シスターズ+1が入って来る。


「ち、千歳さん! それに先輩達。 千歳さんが使者なんですか?」


 元々俺達がここに集まるのを指示したのは千歳さんだ。

 元々の発端の俺の親父と学園長、そしてその後輩である千林 千歳さん。

 千歳さんが使者なら納得出来る。


「ひぃ」


 そんな中、お姉さんが小さく悲鳴を上げた。

 あぁ、そう言えばポックル先輩を送った際に、同じ顔した千林ファミリーを一度に見たようでショック受けていたね。

 俺なんかは一人ずつだったからそれ程ダメージは受けなかったけど、いきなりこれに遭遇したらトラウマになるのが分かる気がする。

 でも親父の学生時代に千歳さんとの面識は無かったんだろうか?


「お姉さん、金曜日も会ったでしょ? それに千歳さんって親父の後輩なのに知らなかったの?」


「急に現れるとまだちょっと……。それに光にぃって、あたしの家に居候してたのよ? それなのに女を連れ込むなんて事する訳無いじゃない。居候している家に無理矢理押しかけて来るなんて暴挙をかました美都乃ちゃん以外の生徒会メンバーは知らなかったのよ」


 あっ、なるほど、まぁ常識の有る人ならそうだよね。普通なら。


「それに、後ろから他にも湧いて来ないかって恐怖がちょっとね……」


 両手を体に回して少し震えてそう言うお姉さん。

 お姉さんたら大袈裟だなぁ~。


「って言っても五人だけなんでしょ? 似ているのは」


 今ここに居る四人の他に中学生の姉貴質な妹も似ているとドキ先輩が言っていた。

 こうなったら四人も五人も一緒だろう。


「えぇ、と言う事ならね」


「え?」


 ゾクリ


 そう言えば、お姉さんが最初にって言い出したんだっけ?


「そろそろ話しをしてもよろしいかしら?」


 俺達がヒソヒソと千林ファミリーの話をしていると、少し怒気を孕んだ声で千歳さんが割って入って来た。


「「ヒぃ」」


 その迫力に俺とお姉さんはさく悲鳴を上げながらお互い抱き合い、小コクコクと頷いた。


 う~ん、恐るべし千林一族!


「まず最初に、ごめんなさい牧野くん。私は使者じゃないわ。美都乃さんから皆を生徒会室に集めるように言われたの」


 え? 千歳さんは使者じゃないの?

 じゃあ、誰なんだ?


「それと先程の牧野くんが口にした疑問の回答も聞いているわ。漏れたのは印刷所からのようです」


 千歳さんは不思議と無表情でそう言った。

 いや、と言うより想定内である事象を淡々と語ったと言う表情なのか?


「そんな……、いや、そうだ! これか!」


 そうだ、金曜日の夜、俺が何か見落としていると思った事。

 御陵家のご用達の印刷所なんだから情報が漏れるのは当たり前じゃないか。

 何でこんな事を分からなかったんだ?

 俺だけじゃない、学園長や橙子さんまでその事を想像してなかったんだろうか?


「なるほど、それは盲点だったわ。いや今回なら有ってもおかしくなかった……。牧野くん一つだけ言い訳させて。長い生徒会会報の歴史の中で、今まではこんな事は無かったのよ」


 千歳さんの言葉に悔しそうに野江先生がそう言って来た。


 ?


「えっと、どう言う意味ですか?」


 言葉の真意を読み取り切れない俺は野江先生に説明を求める。


「そのままの意味よ。創始者は今まで印刷所に途中で原稿を寄越すように手を回した事は無かったの。私もずっとこの問題を解決しようと裏で動いていたから分かるんだけど、創始者は今まで出来上がった物を受け取るまでは検閲なんてしなかった。だから私も美都乃さんも依頼してしまえばこっちの物と油断していたの」


 元生徒会長でこの問題に取り組んだ野江先生。

 しかも、この問題を解決する為に単身この学校に帰って来たんだ。

 そんな裏事情は調査していたのか。

 そう言えば美佐都さんや学園長も現物を先に作って見せ付けると言っていた。

 だから誰も疑問に思わなかったのか?


「それにわざわざ夜遅くに印刷依頼をしたのも計画の内だったのよ。美都乃さんは事前に今晩データを送るから届いたらすぐに印刷を開始してと電話で依頼していたの。届き次第印刷は始まり、土曜日の朝には刷り上がる。そこまでいけば後は製本作業だけなのでもう創始者でも止められないわ。それで私達の事前工作は完了する筈だった。まさか、その前に手を打っていたなんて」


 野江先生が唇を噛みしめながらそう吐き捨てた。


「なんで? 今回は?」


 いや、答えは一つだ。

 そんな事分かり切っているじゃないか。


「……俺の所為?」


 千歳さんが顔を伏せる。

 その仕草が全てを物語っている。


「俺が目立ち過ぎたから?」


 俺は頭の中が真っ白になった。

 橙子さんと桃山先輩が告白した様に俺を目立たせなくする計画が元々有った。

 そう俺は最初から創始者に目を付けられていたんだ。


「それも有るのだけど、印刷所に手を回した事自体は送った直後だったと思う。千花が言ってたのよ。会報を印刷所に送る前位から外から変な気配がしたって。恐らくその時に会話を聞かれていて、そして印刷所に手を回したんだと思うの」


 そう言えば!

 原稿を送った後、外を気にしていたドキ先輩を、俺がただの気の所為だと言って引き留めたんだ。

 あの時、もっとドキ先輩の言葉を真剣に聞いていたら、この事態は避けれたのだろうか?

 くそ! 印刷所の事にしても、ドキ先輩の事にしても、俺がもう少し冷静で有ったら止められたかもしれなかったのか!


「今から少しだけあなたに辛い話をします。本当はこんな形で語りたくなかった。全てが終わった後に笑い話にするつもりだと美都乃さんは話していたの」


 俺が自分の不甲斐無さに苛立っていると、千歳さんは思い詰めた顔をして俺を見詰めた。

 辛い話? 全てが終わった後って?


「美都乃さんは、あなたに美佐都ちゃんを変えたから創始者も変えられると思って生徒会に入れたと言ったと思うの」


 そうだ、確かに学園長はそう言っていた。

 俺は千歳さんの言葉に頷いた。


「確かにそれは間違いないわ。ただ、少し違うの。美佐都ちゃんを変えてしまったから早急に創始者を変えなければいけなくなったと言った方が正しいのよ」


「え? それはどう言う事?」


 変えてしまったから、変えなければいけなくなった?


「多分こうも言わなかった? 美佐都ちゃんが変わらなかったら、創始者を変えるつもりは無かったって」


 それも言っていた。

 死んだ目をしたような部活紹介写真を悲しんでいる事自体は気には掛けていたみたいだけど、それは旦那さんの遺言だから仕方無いと。

 それに、そもそも親父と結婚する為にやり始めた計画だったと……。

 でもそれは新しい夢の実現に必要だと言っていたじゃないか。


「あなたが、ただ美佐都ちゃんに接触するだけだったら、ここまで大事にしなかったし、多分創始者も何もしてこなかったと思う。それに美佐都ちゃんを変えたのがあなた以外だったら創始者は喜んでいたでしょう」


 そうだ、その事も言っていた。

 俺が美佐都さんを変えたから計画した、そして俺以外が変えてたら計画しなかった。


「なぜ俺が変えたら創始者は怒るのですか? 親父の事を嫌っているからにしても、納得がいかないんですが」


 なぜそこまで俺を敵視するんだ?

 親父が昔激怒させたとは言え、息子の俺まで皆が守ろうとする程に創始者が俺を敵視理由が分からない。



「牧野くん。それは私から伝えようか」


 俺が創始者の敵意の理由に困惑していると、そんな声が聞こえて来た。

 慌てて皆がそちらに目を向けると、そこには芸人先輩が立っている。


「光善寺先輩! いつの間に!」


 千歳さんの背後の扉が開いた気配は無かった。


「あはははは! まぁ劇的な登場のタイミングを、そこのロッカーの中から今か今かと待ち構えていたんだよ!」


「暇人か!」


「ふっふ~」プルプル。


 なんで、こんな時に芸人先輩が現れる!

 しかも生徒会室に隠れていたって?


「何でこんなところに居るんですか? ハッ! もしかしてPCからデータを削除したのは……?」


 そうだ、この人は木曜日も金曜日も絶妙のタイミングで現れていた。

 そしてこの人は全てを知っている。

 創始者に報告するのも自由自在だ。

 もしかして騙されていたのか?


「う~ん、心外だなぁ~。牧野くんにそう言われると、とても凹むよ」


 芸人先輩は大げさに傷付いた素振りを見せる。

 その演技がかった仕草がとても胡散臭い。

 このやり取りで周りも警戒しだした。

 スッとドキ先輩が扉の前に移動して、芸人先輩を逃すまいと身構える。

 萱島先パイなんかは地べたを這いながらも目の色が攻撃色になっていた。

 しかし、当の芸人先輩は、一連の演技を終えると涼しげな顔で俺達の疑念の目を受け止めて笑っている。


「フフッ、最初に否定しておこう。私は美都勢さんのスパイじゃない」


「え? その名前……」


 今、美都勢ミトセさんと言ったのか?

 芸人先輩は俺の驚いた顔に満足そうに頷いた。


「私が君達の待っていた使者なんだよ」


 芸人先輩は腕を組んで仁王立ちし、とてもいいどや顔をしてるが、やかましいっ!


「どう言う事なんですか? なんで先輩が使者なんですか!」


「ん? 今更それを聞くのかい? そこの転がってるダメ人間から聞いただろう? 私は創始者の旦那さんの親友だった家の者だと。正確には曾孫だがね」


 転がってるダメ人間って?

 チラリと床にへばりついて涙と涎の水溜りを製造中の萱島先パイに目を向けた。

 スパイじゃないと分かってまた落ち込みを再開してたんだな。

 なるほど……、いや、その様はまさにダメ人間だと言う事で納得したのじゃなくて、芸人先輩の実家はこの学園のスポンサーで、創始者の旦那さんと古くからの付き合いがあったと言う事を。

 光善寺家は今も学園の中で研究所を建てたりと、ある意味好き勝手する事を許されている。

 使者に選ばれてもおかしくないのか。


 俺の脳裏にの親友だった光善寺君の顔、そしてが彼に美都勢さんの事を頼んだ時の場面が浮かんだ。


「いや、ならなんで創始者と敵対するんですか?」


 いまだに御陵家と付き合いが有ると言う事は、遺言か何かで美都勢さん、若しくはこの学園を気にかけていると言う事だろう。

 なら、創始者の敵で有り、旦那さんの遺言を蔑ろにしようとしている俺に味方する使者役をするのは違う気がする。


「私はと言うか、光善寺家は美都勢さんと敵対する気は無いよ。まぁそれは追々話そう。まずは君についての話の続きと美佐都さんと橙子の今後についてだ」


 え? 美佐都さんと橙子さんの今後?

 今後って何かされるのか?

 それに。


「二人は無事なんですか?」


 俺は芸人先輩に両肩を掴み揺さぶりながら聞いた。


「こ、こらそんなにぐラングランされると目が回って酔う……うぷ」


「あっすみません」


 焦りすぎて力加減が出来ず思いっ切り揺さぶってしまっていたらしく、芸人先輩は気分が悪そうにしている。


「まぁ気持ちは分かるが落ち着きたまえ。当たり前だが二人は無事だよ。美都勢さんにとっても可愛い曾孫達だからね」


「良かった」


 二人は無事なのか。

 無事と聞き俺は安堵した。


「但し、今の所は、だ」


「え? それってどう言う事ですか?」


 今の所って? じゃあこれからは?

 脳裏に親父と学園長の身に降りかかった悲劇が浮かんだ。


「まさか!?」


 学園長と同じく学園を去る事になるのか?

 そんな、なんで二人が去らなければならないんだよ。


「そのまさかだよ。現在御陵家邸で親族会議が開かれている。その結果次第と言うわけだが、まぁ十中八九君の想像通りだろう」


 何でだ? 何でそこまで創始者は怒るんだ?


「そこで君の話だ。君はある意味存在自体が創始者にとってタブーと言えるんだよ」


 俺はその言葉に頭が真っ白になった。


 タブー? 俺の存在がタブーだって?


 俺はただ単にこの街に帰ってくる事が分かった時に、親父の母校が気になってこの学園を選んだだけだ。

 創始者の事情や御陵家の事など微塵も知らずに選んだんだ

 それなのに創始者にとってタブーってなんなんだよ。

 親父はこの事を知っていたのか?



 クソ! なんなんだ? どう言う事なんだよ!

 俺は様々の疑念が渦巻き混乱している頭で、芸人先輩の次の言葉を待った。


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