第42話 扉に耳あり

「え? ………おと…う……?」


 覚悟を決めて部屋に入ると、部屋の奥に重厚でかなり高そうな机を前にして背筋がピンと伸びた女性が、俺の顔を驚きの色を持って呆気に取られている表情で絶句していた。

 入った瞬間はかなり厳しい表情で俺を睨んでいたのだけど、俺の姿を見るや否や一瞬何かを小さく呟いたかと思うと、こんな風に固まってしまったんだ。

 そう言えば、学園長も表情が違うとは言え、俺の顔を見て固まっていたっけ。

 理事長室の奥に座して固まっている女性はかなりの高齢だと思うのだが、第一印象としてその綺麗な姿勢から年齢を感じさせない力強さを感じた。

 どこと無く学園長やギャプ娘先輩に似ているので、多分この人が理事長なのだろう。

 まぁ、ここ理事長室だしね。


「あ、あのどうしました?」


 このままだとにっちもさっちもいかないので、固まって動かない理事長に声を掛けてみた。

 すると、まるで魔法が解けたかの様に理事長は我に返り、俺が入って来た時と同じ表情に戻り激しく睨んできた。


「コホン……なるほどそれが可愛い孫をたぶらかしていると言う不埒者の顔ですか」


 そして、一度小さく咳をしたかと思うと、その鋭い目でこちらを見据えながら静かなる圧力を込めて俺にそう尋ねてくる。


「は?」


 あまりの突拍子の無い発言に頭が真っ白になる。

 孫を誑かす? どう言うことだ?


「あの~仰ってる意味が良く分からないのですが……」


「ほう? 身に覚えが無いと言うのですね?」


 俺の言葉に更に圧力が上がる。

 丁寧な言い回しなのが余計怖い。

 俺を見て固まっていた事といい、短時間で起きたこの俺の理解を超えた出来事の数々に頭が混乱した。


 取りあえず情報を整理すると……、え~孫と言うとギャプ娘先輩の事だよな?

 あれ? 庶務先輩も親族と言う事だし孫になるのかな?

 いや、庶務先輩を誑かすなんて命知らずな真似はした覚えが無いので違うだろう。

 と言う事はやっぱりギャプ娘先輩だよなぁ~。

 しかしギャプ娘先輩にしても誑かすなんて事は……う~ん正直そう言われてもおかしくない言動はしちゃってるのか?

 入学式のお姫様抱っこに始まり、打ち上げの際の反応が面白くてついついからかってしまった事、それに今日のプロポーズもどきか。


 いったいどれだろう? 心当たりは思ったより多いや。


 まぁ、さすがにプロポーズもどきは情報が届くにも早すぎるだろうから、周知の事実と思われるお姫様抱っこに学園長が俺の捕獲命令を出したと言う失神事件のどちらかか、いや両方なのだろうか。

 俺が首を捻ってそんな事を考えていると、理事長は小さく舌打ちをした。

 その音は、ただの怒りと言うより、どこと無く戸惑いの色を含んでいたように聞こえた。

 その真意が俺には分からない。


「……では、あなたは美佐都の事をなんとも思っていないと?」


 名前を言ったって言う事は、やっぱりギャプ娘先輩の事だなんだな。

 理事長の言葉からすると、単純に行動に対しての追求をしたい訳ではないようだ。

 要するに自分の可愛い孫にちょっかい出す奴の素性を調べ、悪意有らば容赦はしないという事なのだろう。


 恐らくこの人には適当に誤魔化すと言う事は通用しそうも無い。

 良感情だろうが悪感情だろうが正直に話さずに嘘で場を取り繕おうとすると、それこそ良くて退学、悪いと……ブルルッ、まぁそんな事も有り得るかもしれない。


 ……しかし、俺が来なかったら呼び出そうとするつもりだったなんて結構過保護だよな。

 なんでこれを一年生の時からしてあげれなかったんだ?

 そうしたら鉄面皮なんてあだ名を付けられる程に頑なに他者を排除する様になる事も無かったじゃないか。


 ……そうしたら、あんなに傷つく事も無かったんじゃないか?

 ふとさんの泣き顔が思い浮かぶ。


 それにしても『なんとも思っていない』か……。

 そりゃあ、かなり濃い出会い方をしたし、異性耐性0な可愛い本性を暴いたりと色々有ったけど、会ってまだ一週間も経っていないんだよな。

 勿論頼りになる先輩だし、牧野会長の息子を抜きとしても信頼してくれているようだ。

 嫌いな訳じゃない、ただだからと言って俺が今美佐都さんの事をどう思っているのか正直自分でも良く分かっていない。

 ただ、これ以上彼女が泣く姿を見たくない。

 そうだな、これが俺の今の真実だ。


「正直な所分かりません」


 理事長の目を見て俺はそう言った。

 その言葉を受けて理事長は怪訝な顔をする。


「分からない? 分からないとはどう言う事ですか?」


 俺の回答の真意を捕らえかねているのか少しイラついた感じで聞き返してくる。


「会って一週間も経っていませんので生徒会長の事をまだよく知りません。勿論嫌いな訳では有りませんし、頼りになる先輩だと思っています。ただ……」


 俺は正直心の内を話す。


「ただ、何ですか?」


 少し穏やかな口調に変わっている。

 顔付きも険しさが消えて俺の次の言葉を促した。


「ただ、彼女の夢を支えてあげたいと思っています」


 これ以上夢の為に苦しむ彼女を見たくない。


「あなた如き不埒物に支えられる程、美佐都は弱くないわ」


 この人は彼女の弱さを知らないのか?

 昔の美佐都さんがどうだったかは良く知らない、噂される鉄面皮、庶務先輩の言っていた無関心、それが彼女と皆が思い込んでいただけじゃないのか?

 そう決め付けて、だから美佐都さんもそう思い込んでいただけじゃないのか?


「彼女は普通の女の子です。色々と噂されてる昔の彼女の姿は俺は知りませんが、今俺の前に居る美佐都さんは俺達の言葉に一喜一憂したり、夢が壊れそうになって泣き出したりする普通のか弱い女の子なんです」


 俺の言葉に理事長は目を剥いて言葉に詰まっているようだ。

 やっぱり美佐都さんの本当の姿を知らなかったのか。

 だから鉄面皮なんて呼ばれるようになるまで放っておいたのか!

 俺はその憤りを言葉に乗せて話を続ける。


「何故彼女があそこまで自分を守る為に殻に閉じこもり、心の中でしか泣けないようになるまで放っておいたのですか? 今回の俺みたいに呼び出して注意したりとか出来たでしょうに。もっと早く助けてあげてくれていたら、あんなに傷ついてまるで小さな子供みたいに泣く事は無かった筈です」


 いや違うな。


 それらは俺の不注意の所為だ。

 閉じ篭っていた心を無理矢理引っ張り上げて外気に晒し、俺の言葉で傷付けて泣かしてしまった俺の責任だ。

 知らない人間に当たって責任を擦り付けようとしても仕方が無い。

 今の俺の言葉に俺自身が罪悪感で次の言葉に詰まってしまった。


「ふぅ……、少し落ち着きなさい、牧野君」


 理事長は小さく息を吐くと初めて俺に対して俺の名前で呼んだ。

 その言葉で俺は我に返る。

 あれ? 俺今何してたっけ?


 ………………。


 あーーーーしまった! また暴走して勝手に色々暴言を吐いてしまった!

 しかも理事長に! それも孫の事で!

 あちゃ~部外者の俺なんかが何偉そうに言ってるんだよ。

 こりゃ退学になってもおかしくないかもな。

 創始者に会う前にゲームオーバーだ。

 ごめんなさいみんな、俺早々に退学になりそう。

 俺は死刑宣告を待つ気持ちで理事長の言葉を待つ。


「一つ聞きたいのだけど、あの子があなたの前で泣いた?」


 思っていた言葉とかけ離れていたので俺は一瞬意味を捉えかねた。

 俺の前で泣いたと言う事を聞いたという事は俺が泣かせたのかと言う事を聞きたいのか?

 そうだ俺は暴走して勢い余ってまだ理事長には届いていないであろう今日のギャプ娘先輩を泣かせてしまった件まで喋ってしまっていた。

 この暴走癖を治さないと本当にいつか痛い目に……、うん今まさになっているよね。


「俺だけの前と言う訳では無く、生徒会の皆の前で、です。泣いた原因は俺ですが……。俺が不注意にも前回選挙の騒動の真相を尋ねてしまったんです。そうするとその騒動に責任を感じて『自分が生徒会に入ったからだ』と泣き出してしまいました。真相を聞いたのもただの俺の愚痴みたいなものです。生徒会に入るのになぜ先輩達から睨まれる事になるのか知りたくて」


 俺の言葉に理事長は少し悲しげな顔をしている。


「そうですか、美佐都がその件でそこまで追い詰められていましたか……」


 そこには悔恨の念が込められていた。

 やはり分かってなかったのだろうか?


 ……いやそうなんだろう。


 少なくとも俺と出会う前のギャプ娘先輩なら何とも思わなかったのかもしれない。

 今までは鉄仮面を被り不要な感情を切り捨て夢破れても気にせず自分の道を突き進んでいたのかもしれない。

 ……俺にさえ会わなければ。


「俺が悪いんです。今までの生徒会長ならそこまで気にしなかったかもしれません。俺が男性が苦手と言う本性を暴いてしまった為、情緒不安定にさせてしまっていました。最近の生徒会長の言動に生徒会の先輩達も驚く位に普通の女の子になっていたそうです。誑かすと仰られた事も間違っていないと思います。俺の発言に表情をコロコロと変える先輩が見たくてついつい意地悪な事を言ってしまったりしました。その結果泣かせてしまったんです」


 俺の言葉に何故か理事長は笑い出す。

 何か面白い事を言ったのだろうか?


「フフフフフ、あの子が男性が苦手と来ましたか。ただ単に心を動かす人が居なかった……。まぁ良いでしょう。それであなたがそんな美佐都を支えるとはどういう事ですか?」


 最初の印象とは異なりとても穏やかな顔をしている。

 俺の話に興味を持っているようだ。

 そんなに面白い話は言っていない筈だけど、俺の懺悔の言葉が笑いのツボに入ったのだろうか?


「それは……、あの、泣いてしまった生徒会長を見て、……小さい頃から夢見ていた理想に裏切られて泣いている彼女を見て……、ただ助けてあげたいと思い、勢いに任せて『夢を叶えるために支えます! 守ります!』って言ってしまいました。勿論それは本心では有るのですが、今思うと身の程知らずで凄く恥ずかしいです」


 俺は自分の発言を思い出し赤面して俯いてしまった。

 ちらっと理事長を見ると同じく顔を赤くして俯いてる。

 何故だろうか?

 肩がフルフルと震えている怒っているのか? いや少し窺える表情からどちらかと言うと笑いを堪えているようだ。


 まぁそりゃそうだよな、今のは俺が聞いても物凄く青臭い言葉に笑ってしまうよ。

 暫く俯いていた理事長だったが、落ち着いたのか顔を上げた。

 その顔は俺が部屋に入って来た時の顔の様に厳しい物だった。

 少し緩んでしまった心がぎゅっと握りつぶされたかと思う程その圧力は激しく、思わず腰が抜けそうになったが何とか気力を振り絞り踏み止まる事が出来た。

 やばかった完全に油断していた。


「あなたの言い分は分かりました。良いでしょう。その言葉が本当なのかじっくりと見定めさせて貰います」


 厳しい顔をしたもんだから『それでもお前は退学だ~!』と言い出すのかと思っていたので心から安堵する。


「ただ……」


 理事長は更に顔を険しくして俺を睨む。

 え? 『ただ』なんでしょうか?

 ゴクリ……。

 俺は次に続く言葉に固唾を飲む。


「もしその言葉が嘘だったり、若しくは途中であの子を見捨てて逃げ出したりしたら……、その時は分かっているのでしょうね?」


 その目からまるで『殺すぞ!』と言うような殺気を感じる。

 本日最大の圧力を受けて吹き飛びそうになる俺だがこれだけはこの圧力にも負けずに言えるだろう。


「勿論です! 絶対夢を実現させてみせます!」


 のあの泣き顔は二度と見たくない。

 俺は理事長の圧力を押し返すような力を込めてそう宣言をした。


「……本当に似ている……」


「え? 似ているって誰にですか?」


 宣言した俺の顔を、何処か懐かしいと言った表情で『似ている』と呟いた理事長に問い返した。

 最初の時も俺の顔を見て何かを呟いていた。

 似ていると言う言葉からすると、理事長の知り合いの誰かなのだろうか?


「コホン、何でもありません、こちらの事です」


「はぁ……」


 理事長はそう言って誤魔化した。

 良く分からないけど学園長と同じく、俺の親父の事なのかも知れないな。

 今まで理事長と接点が有ったなんて話が出て来なかったのでピンと来なかったけど、学園長が現役学生の頃も理事長は学園に居ただろうし、親父は伝説と呼ばれる生徒会長なんだから面識有ってもおかしくないや。


「その言葉、口に出したのなら精進しなさい。今のあなたではまだまだその言葉には足りないでしょう」


 理事長は、また先程の穏やかな表情に戻り、俺にそう忠告してくれた。

 確かに今の俺ではこの言葉に見合っていないな。

 う~ん、またもや暴走して恥ずかしい事を口走ってしまった。


「あぁ牧野君、一つ誤解が有るわ。今まで今回の様に一生徒を呼び出して問い質す事をしなかったのを放置していたと取っているようだけどそれは間違いです」


 ん? 誤解? 実は今までも呼び出して始末していたとか言う事なのだろうか?

 鉄面皮と呼ばれてから暫く男共が寄って来なかった理由は実はそうだったのか。

 それはそれは失礼な事を言ってしまってすみません。


「今まで一々呼び出さなかった理由は、あの子が不要としていたからよ」


 あっ呼び出しは無かったのか。

 でも不要ってどういう事だろうか?

 ギャプ娘先輩それはそれで傷付いてはいたと思うんだけど。


「不要ってどういう事でしょうか? 生徒会長が自分で要らないと言ったのですか?」


 昔のあの人ならそう言うのかもしれないな。

 ではなんで今回は俺を呼び出そうとしたのだろうか?


「まぁ、あの子自身は何も言わないわ。誰にも心を動かさず来た者を切って捨ててきましたからね。今回あなたを呼ぼうと思ったのはあの子が変わったからよ。何事にも無関心だったあの子がこの数日で明らかに変わった。表面はいつも通りでしたが可愛い孫の事だものすぐに分かったわ。そんな可愛い孫を誑かした不埒者を許しておけなくてね」


 あぁ俺にこれ以上悪さをするなと言う警告の為ですね。

 心に刻んでおきます。


「まぁこれから頑張りなさい。私もあなたに興味が湧いてきましたし、あなたが頑張っている間は静かに見守りましょう。あぁ、そう言えば何か書類を届けに来たと言ってましたね。受け取りましょうか」


 あっそうだった! 元々この書類を届けに来たんだった。

 あまりの出来事に忘れていた。

 けど、興味が湧いてきたってなにかとっても怖いんですが……。


「ええと、これが預かっていた書類です。お願いします」


 少し寿命が縮む思いをしたけれど何とか無事に書類を届ける事が出来た。

 ん? 理事長は書類を受け取りながら何か机の上に置かれたモニターを見て笑っている?

 こちらからでは何が映ってるか分からないな。


「はい、確かに書類預かりました。もう戻って良いですよ。もう一度言いますが、くれぐれも自分の言った言葉に責任を持つ事を忘れない様に」


 理事長は優しげだが思いを込めた眼差しで俺を見つめる。

 その思いに沿えるように頑張って行こうと思う。

 とは言え何とかこの難局を乗り越える事が出来てホッとする。

 いや朝の演説と同じく終わった訳では無く首の皮が一枚繋がっているだけなんだけども……。


「それでは失礼します」


 俺はそう言うと理事長室から出るために扉に向かう。

 ん? 何か外で音が聞こえた?

 気のせいか。


「あぁ、この後隣の学園長室に行くのでしょう。娘と姪孫の橙子さんによろしく言っておいて」


 あれ? 何で学園長室に行く事知っているんでしょうか?

 あぁ庶務先輩は姪孫と言う事はギャプ娘先輩のはとこになるのか。

 いやいや、それよりも何故ここで庶務先輩の名前が?

 何故だろうと思いつつも『分かりました』と答えて理事長室を出た。

 隣の学園長室をチラッと見る。

 なんか理事長室を出た途端どっと疲れが噴出して来たのでこのまま通り過ぎてみんなの元に帰りたいなぁ~。

 そう言う訳にもいかないので扉の前まで行きノックした。


 コンコン


『待っていたわ。早く入って来て。……プっプププ』


 すぐに中から声が聞こえて来たんだが、あれ? 何か笑いを堪えている?

 なんでだろう?

 俺は不思議に思いながらも扉を開けた。

 部屋の中には笑いを堪えている顔で俺の見ている学園長。

 そして何故か少し不機嫌な顔をしている庶務先輩が居た。


「あの~何故藤森先輩がここに?」


 それになんで不機嫌なんだろうか?

 俺を見送る時にはあれ程嬉しそうだったのに。


「勿論君が心配になったから様子を見に来ただけだよ」


 そう言ってプイっと横を向く。

 まだ朝の事を怒っているのだろうか?

 でも心配して見に来てくれたのはありがたいな。

 ……なぜあんな悪い笑顔で見送ったのかは悲しくなるので考えないでおこう。


「そうですか、藤森先輩ありがとうございます。ご心配を掛けましたが何とか無事に書類を届けることが出来ました」


 俺の言葉に何やら顔を赤くして文句をぶつぶつ言う庶務先輩をこれまた楽しそうに見つめる学園長。


「あらあらクールな橙子ちゃんも牧野くんにかかれば形無しの様ね」


「なっ! そんな事は有りませんよ!」


「ほら、そんなムキになるとこなんて珍しいわよ?」


「な、な、な……」


 二人のやり取りについて行けずボーッと眺める俺。


「あの~、俺を呼んだのは何の用だったのでしょうか?」


 なかなか終わらない二人のやり取りに痺れを切らせてそう尋ねた。


「あらごめんなさい。用事の殆どは橙子ちゃんに教えてもらえたわ。それよりこれについて色々聞きたいわね」


 そう言ってボイスレコーダーを取り出した。

 あっもしかして写真や先輩達のインタビューの事についてか。

 庶務先輩が知らせたのか?

 いやボイスレコーダーはポックル先輩に渡したし形が違うな。

 それに庶務先輩が知らせたらわざわざ俺に聞くことは無いか。

 学園長はボイスレコーダーのスイッチを入れた。

 そこから聞こえてきた音声は……。


『勿論です! 絶対夢を実現させてみせます!』


 えぇぇぇぇぇぇなんでぇぇぇーーーーーーー!!

 先程の俺の恥ずかしい言葉が流れてくる。


「フフフ、牧野くん? 壁ならぬ扉に耳有りよ」


 小悪魔みたいにウィンクしながらそう言ってくる学園長。

 さっきの外から聞こえた音はこの人達だったのか。

 なるほど、理事長が二人の名前を言ったのは、あの時外の様子をモニターで見てたからなのか。

 しかし学園長ってアラフォーなのになんか小悪魔みたいな仕草が似合う人だな。


「あら? 今牧野くんから何かイラっとする邪念を感じたのだけど?」


 この人もエスパーか!?

 慌てて誤魔化す。


 しかし、本当に監視社会怖いな!

 俺は改めて心の底からそう思ったのだった。

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