第6話 目玉への着陸

 目玉を周回しながら地上へ降りていく。

 重力ブレーキがよく効き、秒速1000m程度の速度で降下していく。大気圏に突入しても船体が高温になることはない。


「大昔は火だるまになって大気圏突入してたんだろ?」

「重力ブレーキが無かった時代はな。みんな命がけだったんだよ」

 鳥頭と鮫肌船長の会話である。

「どうやって減速してたの?」

「そりゃパラシュートとかさ、翼の揚力とかさ、そんなんで減速してたのさ」

「原始的だよね、でもそれが良い」

「何でだよ」

「いやね。昔の航空機ってさ、空力だけじゃないの。他には何にもない」

「それで?」

「そう。今は失われているその空力だけ。翼の揚力だけで空飛びたいんだよ」

「なるほど」

「そう、飛行機作りたいんだ」

「それはお前が鶏だから飛びたいって話なのか?」

「いや、それとは別。俺が鶏でなくても犬でも人間でも飛びたいんだ」

「重力制御で飛べるのに? わざわざ原始的な方法で?」

「だからそれが男のロマンって奴だろ? そうだろ?」

「無駄な努力じゃないかな」

「無駄じゃないって」


 鮫肌船長と鳥頭の野暮な会話は続く。


 そうこうしているうちに、地上5000mまで降下し水平飛行に移る。速度もかなりゆっくりになった。外の様子がモニターに映し出されるのだがうす暗い。薄暮といった風であった。


「暗いな。これで昼間なのか。一日中昼間だって聞いてたが」

「そうですよ。ここの昼間はいつもこんな感じです。今日は良く晴れていて明るい方じゃないですかね」

「お前たちここに来たことがあるのか?」

「2~3回ありますよ」

「何しに来たんだ?」

「それはでぇ?」

 ララの誘導に素直に答えようとする鳥頭の嘴を塞ぐ鮫肌船長だった。

 喋るなと目配せをする。

「ララ様、申し訳ありません。お客様情報は極秘扱いですのでお話できません。すみません」

「残念。引っかからなかったか。ところで降りる所は決まっているのか?」

「ええ、この先にある高原のその先の山岳地です。面白いものが見れますよ」

 今度は鮫肌が答える。

「それは何だ?」

「もう少し高度を下げます。ほら、地面に見えるでしょう」


 そこに見えてきたのは大きな矢印と、それを取り囲むように描かれた様々な動物の絵であった。


「これは何だ? 地上に絵が描いてある」

「空から降りてくる神々を迎える為の巨大な地上絵です。あの矢印の先に降りてくれというメッセージです」

「私達が神となるのか?」

「いいえ。神々の伝説が残っているだけで、今は宇宙からの来訪者だと認識されていますよ」

 ララの質問に鮫肌船長が答える。そして鳥頭が続ける。

「でもね。ララ様。宇宙からの客人としてもてなしてくれるんですよ」

「歓迎されますね。勿論滞在の費用は支払います」

「それは金貨で払うのか?」

「帝国の金貨でも良いのですが、食べ物とか衣類も喜ばれます。工業製品は規制されていて貨幣の代わりにはできません」

「そうか、そうだな。オーバーテクノロジーの物は渡せないのか」

「そうです。見えてきましたよ」

 矢印の先に集落が見える。その先の丘の上に巨大なヘリポートともいうべき平坦な場所が造成されていた。赤い十字と大きな円のマークが描いてあった。


「では降ります。しばらくするとここの村の代表が出て来ます」


 輸送船ストライクはその巨大なヘリポートへゆっくり着陸した。

 

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