第3話 救難信号
『船長、カーマイン船長。ブリッジへ』
船内放送がかかる。
「緊急事態のようですね。皆さんもブリッジへおいで下さい」
階段を上がり廊下を数メートル進んだところにブリッジがある。
ブリッジと言ってもただのコクピット。最大5人で操作できるようになっている。
しかし、この船には二人しかいない。席は三つ空いている。
船長は扉を開きブリッジへ入る。ミサキとララ、そして女鹿がそれに続く。
「どうした鳥頭」
「救難信号を受信しました。概ね正面です。現在位置と目玉の中間地点だと思うのですが、こんな場所でこんな信号は異常です。罠かも?」
目玉=プロキシマ・ケンタウリbである。アルマ宇宙連合に所属していない惑星で、正規の通商航路からは外れている。
その宙域からの救難信号である。
疑わしいのは当然だろう。
「船長。どうしますか?」
「宇宙の船乗りはな。助けを求める奴がいれば助けに行く。そいつが敵であっても例外は無い」
「そう言うと思いました。では行きますね。途中ジャンプして軌道を同期します」「そういう事ですお姫さま。罠だった場合は即時戦闘になりなりますがご了承願います」
「大丈夫です。あなたの良心に従って行動してください。それにクレド様も罠ではないとおっしゃっています」
黄金の女鹿がこくりと頷く。
そう、クレド様と呼ばれたこの黄金の女鹿こそ、今回追跡されている最大原因だった。
星間連合の決定に基づき、アルマ帝国の深い山中に幽閉されていた女神である。
何故、アルマの女神を幽閉していたのか理由は定かではない。500年以上前の話だからだ。しかし、この度この女神であるクレド様を地球に亡命させることとなった。アルマ皇帝の決定である。
彼らストライク運送店は、その優秀な実績を買われ今回の亡命を請け負ったのだ。
「次元昇華後ジャンプします。10秒前……9……8……」
鳥頭がカウントダウンを始めた。カウントが0になり船は次元昇華する。
虹色の光に包まれ高次元に突入そして回帰。
「目標と軌道は同期済。アレは?」
目の前に小型の? いや、小型の戦闘艇が見えた。
「救難信号を受信した。こちら輸送船ストライク。こちらは輸送船ストライクだ。聞こえるか」
「聞こえる。こちら第7機動群のコウ・エクリプス少尉だ」
「そんなところで何をしている?」
「ガス欠だ。助けてくれ。もう空気も無いんだ」
「宇宙服が必要なんだな。分かった、そちらへ向かう」
「すまない」
「って、簡単に請け負うんじゃないですよ船長。こっちには甲板員がいないんですからね。誰が行くんですか?」
「俺が行くよ」
「行ってらっしゃい」
面倒ごとの様で、それを楽しんでいる風の鳥頭だった。
鮫肌船長はブリッジを出て作業準備にかかる。
「コウ・エクリプス?どこかで聞いた名前だ……」
「宇宙軍の黒猫ですよ。ララさん」
「思い出した。そう黒猫だよ。御前試合で一度戦った。親衛隊員に推挙されたんだっけ?」
「忘れたんですか? 推挙したのは貴方、ララさんですよ。でも、素行が悪いからと却下されました」
「そうだっけな? その黒猫がこんな所で何をしているんだか。借金取りから逃げているのかな」
「そうかもしれませんね。フフフ」
「チューブの接続を完了。船長が救出に向かいました」
何故かこんな所にいる素行の悪い奴。
しかもララ姫と顔見知りだったとか……。
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