第2話思い出の
スマホの充電が終わった頃ちょうど実家から着信があった
まさか会社から実家に辞職の電話がいった?いやーそんな事ある訳ないか?とりあえず応答のボタンを押す。
「もしもし」
「とーちゃんだけど」
「なに?」
「もう少ししたらフジが採れる」
「だから?」
「部長さんに林檎送るって言ってたじゃねーか」
「もういらない」
「なんで」
「うるさい!」
反射的に終了ボタンを押す
再度実家からの着信
説明するの面倒くさいから出ないことにする、しつこい父のことだから絶対またかけてくるに違いない!
父はいい人なんだけど私との相性は悪い。無口な私はおしゃべりな父が昔から苦手だった。私が返事をするまで何回も何回も話し掛けてくるウザさときたら殺意さえ覚えるレベル
大きな声で喋るから会話が他の人にも筒抜けになるのも本当に嫌だった。
暫くして母親からメールが入っていた。
お父さんが桃子がイライラしてたって心配してたよ(^-^)
きっと嫌な事でもあったんだろう
お母さんから聞き出してみてって
一応お父さんにはわかったって言っといたけど無理に話さなくて良いからしっかりご飯食べて元気で居なさいよ~(^^)v
母は父とは正反対で物静かで思慮深い人。人の心を決して乱したりしない優しい性格。母のそばに居れば私はいつまでもその優しさに甘えて大人になれない気がした。私が実家を出て上京したのもそんな母から自立するのが理由のひとつでもあった。
お母さんと言えば
お母さんの母親、つまり私のお婆ちゃんも本当に穏やかで優しい人だった。優しいんだけどなんか不思議な事をよくしていたっけ。庭先に飛んでくる鳩に紙みたいなものをくわえさせたり、迷い込んできた犬にお説教したりと普通のお婆ちゃんなんだけど普通じゃないみたいな
まぁ私も幼かったから本当はただ鳩に餌をあげていただけだったのかも知れないし迷い犬を追っ払っていただけなのかも知れないがお婆ちゃんはなんか優しくて不思議な人だったなぁ~
そんな大好きだったお婆ちゃんは去年の春にこの世を去った
そうだ!お婆ちゃんのお墓参りに行こう。雪が降る前に
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