手の中にあるもの

千未子

第1話絶望

なにやっているんだ私

だらしなく哀れな姿がアパートの窓ガラスに映っていた。

もう3日もお風呂に入ってないし

スマホの充電もスッカラカンのまま

誰とも会話してないし連絡も取っていない。

長野から上京して二年、友達のひとりも出来なかった私はどこか性格に問題でも有るのだろうか?と思い悩んだ事もあったが今となってはドウデモイイもうこんなとこウンザリ!

3日前、私は仕事を辞めた。辞めた理由なんで話すのも馬鹿馬鹿しいほどのくだらない理由。

女ばかりの職場はちょっとした噂が

なんでそうなるの?ってほど脚色され肥大化するしかも本人の知らない所で。3ヶ月ほど前、部長と私の父親の実家が林檎農家だという話から家内が林檎好きだから一度取り寄せて食べてみたいと言うので送り先を聞いたという事実があった。しかしそれがなぜか「家内にバレた」っと二人で話していたという噂になってそこから話しが盛りに盛られ、私が部長に手切れ金を銀行口座に振り込むように口座番号を書いた紙を渡していたという訳のわからない展開がまことしやかに流れた。

部長は女性に優しいので女子社員には人気があった。そんな部長はあくまで若い女に言い寄られ断り切れなかった被害者。私はというと部長との間に大人の男性との恋に憧れて無理やり色仕掛けと泣き落としで関係を迫ったという昼下がりのドラマさながらの悪女に仕立て上げられていた。それからの3ヶ月は訳のわからない無視やら私だけお茶に誘われないなどの嫌がらせが続いて精神的に追い詰められた。全く身に覚えのない事で辞表を出したその日、空気の読めない新人の娘に「赤沢さんやりますねー」っと声をかけられこの事実を知ることとなった。まさかこんな噂が流れているなんて知るよしもなく私が何かやらかしたのだと思い悩んだ末の辞表だった。とは言え事実無根だと話しても私についた良からぬ印象はこの先拭えないだろうと考えて辞表の取り下げはせず、空気の読めない新人には「噂話の信憑性って何パーセントだろう?」とだけ言ってその場を立ち去った。しかしなにより私が悲しかったのは3ヶ月もの間私に事実を確認しようとしてくれなかった同僚との関係の薄さの方が私を深く傷付けた。

そんな私の全くくだらないお粗末な状況を聞いてくれる友達は今はいない。










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