6-2集合
「あ、歩美……? おま、どうして……?」
「なんで、そんなところにいるのよ。いつの間に脱出したの?」
まさかの人物の登場に動揺が隠しきれない俺と香子。
なんで歩美がこんなところにいるのだろうか。まさか銀が
そう考え銀の方へ目をやるが、銀はまだこちらの様子に気づいていないようで呑気に空を眺めている。
「いや~、話せば長くなるんだよ~。ちなみに麗華ちゃんと宗麟さんもいるよ~」
歩美がそう言って別の樹を指差すと、その陰に身を潜めていた狭山兄妹も姿を現した。宗麟さんは朝とは一転、スーツ姿ではなく山歩き用の服装になっていた。
「えぇっ⁉︎」
もう意味がわからない。どういうことなんだ。
「ど、どういうことなの、歩美。説明しなさい」
「ん~、香子ちゃんと不知火くんと土橋くんが先に進んで一時間くらいした頃かな~。急に麗華ちゃんが現れて、入り口のところから二人で脱出したんだ~。宗麟さんが助けにきてくれたんだよ。それで他の三人と合流したら全部説明するから、一旦入り口のところから脱出しようって言われて、まあなんやかんやあって、ここまで登ってきたんだ~」
いや、なんやかんやって……。歩美もまだ事情を知らないのか。しかし、ドアを抜けて一時間じゃまだ宗麟さんが迎えに来てくれる時間じゃなかったはずだ。どんな予定変更なんだ。しかも洞窟を通って追いかけてくるんじゃなくて、洞窟の外で合流しようとしてたってことは、もうじき俺たちが第三のドアを抜けることがわかってたみたいじゃないか。何より疑問なのはなんで出口の場所を知ってたんだってことだ。
疑問がありすぎて俺も香子も口をパクパクさせるだけで何も言えなかった。
「そんで〜、ここに着いたら三人は洞窟から出てきてたみたいで、なんかもめてるというか慌ただしいというかそんな様子だったから、出て行くタイミングをうかがってたんだ~。そしたら香子ちゃんと土橋くんがこっちに向かって歩いてくるから、びっくりしてとりあえず隠れちゃったんだよ~」
なんで隠れるんだよ。ていうかまず、俺たちが外にいるのが見えてたんなら、出てくるタイミングなんかうかがってねぇでさっさと出てきて事情を説明してくれよ……。
「それであたしたち三人が樹の陰で息を
なっ! いちゃいちゃはしてねぇぞ!
「してないわよ!」
香子もすごい
「えぇ~、してたよ~」
「してたわよねぇ」
「うんうん」
歩美と狭山さんはキャッキャしている。
「ははっ、少なくとも僕にはいい雰囲気に見えたよ。若いっていいねぇ」
そ、宗麟さんまで……。最後の良心と信じていたのに……。
そうか、そんな風に見えていたのか……。
「まあ、とりあえず不知火さんとも合流しましょうか」
狭山さんの表情が引き締まり急に真面目なトーンになった。
「そうね。全員揃ったら話してもらうわよ。今回のこと。最初から。全部ね」
香子は肩を怒らせ、狭山さんに指を突きつけて言う。
そうだな。この物語がどうして始まりなんでこうなったのか、全部説明してもらうぜ。事と次第によっちゃ冗談じゃ済まさねぇぜ。こっちはマジで死ぬかと思ってたんだからな。
銀と合流するため広場を移動する俺たちに、銀はようやく気づき驚愕に目を見張る。
「水野、狭山さんたちまで、これは一体、どういうことだ。何が起きて……」
銀がかつて見たこともないほどに動揺している。無理もない。背にしたドアからくるものだと思っていた歩美と狭山さんが、外から宗麟さんまで引き連れてやってきたら、誰だってこうなる。
「俺と香子も何がなんだかわかってないんだ」
「でもこれで全員揃ったから、そろそろわけを話してもらうわよ」
香子がもはや睨みつけるような勢いで、狭山兄妹へ視線をぶつける。
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