第二章
2-1謎解きの始まり
俺たちが数字とにらめっこを始めてそろそろ三十分程が経過しただろうか。
俺たちは未だに解決の糸口を見つけられないでいた。
「うーん、そもそも、このカンマはなんなんだろうな」
俺はこの数字を見た時からずっと引っかかっていたことを口にしてみた。
「ん~、簿記で金額を書くときに、三桁ごとにつけさせられるやつじゃないの?」
まあ、歩美の言うことはわからんでもないんだが、
「でもこれ、簿記でも金額でもないよな」
「えぇ~、わかんないじゃん」
「じゃあ金額だとして、パスワードのヒントとしては意味不明すぎないか?」
「う~ん、確かに。その金額の組み合わせなんていくらでも作りようがあるもんね~」
そんな俺と歩美の会話を、黙って聞いていた香子が口を開いた。
「ねぇ、簿記と言えば電卓使うわよね。電卓も三桁ごとにカンマを自動で表示するから、電卓でこれを打ち込んでみればなにかわかるかもしれないわ。誰か電卓持ってない?」
んー、なるほど。ぼんやりと筋の通ってそうな意見ではあるが、電卓なんて鍾乳洞を歩くうえで何の役にも立たないであろう代物だ。そんなものを持ってきている者はいなかった。
「なぁ、スマホのアプリの電卓でもいいんじゃないか」
銀がいいところに目をつけた。そうか、その手があったな。
俺は急いで自分のスマホを取り出し、電卓のアプリを起動した。
「早く、打ち込んでみて」
香子が急かす。
俺は言われた通りに打ち込むが、スマホアプリの電卓に数字を打ち込んだところで、ロックは開くはずもない。
これをどうすりゃいいんだ…?
「ねぇねぇ、今、指の動き見てて思ったんだけど、960770って打つとVとIの形っぽく指が動いてたよ~」
うーん、言われてみれば確かにそう見えなくもないか……?
「ってことは、パスワードはVIか……?」
俺の言葉に反応し、入力装置に狭山さんがVIと打ち込む。
違うような気がするんだけどなぁ……。
俺の予想通り、ロックは解除されなかった。
「うーむ、VIとするには少し無理があるようには感じたが、やはりダメなようだな」
銀もそう思っていたか。
VIとするなら960770よりむしろ74269852の方がわかりやすいだろう。
「ま、まあ、この調子でどんどん試していきましょう。下手な鉄砲も数撃てば当たるといいますし。やはりみなさんに来てもらってよかったですわ。私たちにはなかった発想ですから」
狭山さんはフォローしているのか、俺たちの強引な推理を馬鹿にしているのか。彼女のことだからきっと前者であろう。俺はそう信じる。
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