第四章
4-1始動
一月二十七日土曜日。
ピコン。
スマホの鳴る音で俺は目を覚ました。時刻は午前五時四十二分。半日近く寝てたのか。寝過ぎたな。
眠い目を
ま、眩しい……。目にしみる。
寝起きで目をブルーライトに
視力の心配を心の隅っこの方でしつつも、俺はメッセージアプリを起動し新着のメッセージを確認した。香子からだった。
『桂介、昨日一日休んだらすっかりよくなったわ。今日こそ調査を始めるわよ』
昨日も思ったがこいつの体はどうなってるんだろうか。三十八度の熱が出るほどの風邪が一日で治るなんて聞いたことないぞ。だがまあ、治ったんならよかったか。
『そっか。よかったな。だが、
とりあえず時間稼ぎしないとな。昨日何もせずに寝てしまったから、お腹も空いたし何より風呂に入りたい。
『わかったわよ。じゃあ十二時に部室棟のエントランスに集合ね』
素直に聞き入れてくれてよかった。これで時間稼ぎはバッチリだな。
とりあえず風呂を沸かす。と言っても、昨日の残り湯を追い焚きするだけだ。しかもパネルの追い焚きのボタンを押すだけ。
風呂が沸くまでの間に俺は朝食を済ませた。やはり朝は手を抜きがちになってしまうもので、昨日と同じくお茶漬けだ。作るのにも食べるのにも手間がかからないし、何より普通においしい。便利が止まらない。とはいえ、夕飯を食べなかった俺の空腹がお茶漬け一杯で満たされるわけもなく、俺は二杯目を食うことにした。一杯目は普通に食ったが、鮭フレークやチューブのワサビをいれて食べるとこれまたおいしい。アレンジの幅の広さもお茶漬けの長所だ。
まだ満腹という感じではないが炊飯器にはご飯がもう残っていない。さらに、もうすぐ風呂が沸くと電子音声が言ったので、俺は流しに茶碗と箸を置き、部屋干しの状態で吊るされっぱなしになっているバスタオルと着替えを持って風呂場へ向かった。
この学生マンションは風呂トイレは一応別になっていて、それだけ聞くと学生の一人暮らしにしてはいい物件と思われるかもしれない。だがトイレと脱衣所が一体になっていて、トイレとしてこの空間を使っている間はなんとなく落ち着かないということに俺は
なんて考えつつ服を脱いで風呂に入る。風呂場には洗面器があって、それがただでさえ狭い風呂場をさらに狭くしている。正直邪魔だ。最初の頃は体を洗っている時にぶつかることもあったが、今じゃ慣れたものでそんなこともなく、さっさと全身を清めて浴槽に浸かる。
まあ基本的には洗面器が風呂場にあると邪魔なんだが、逆に便利なこともある。浴槽に浸かりながら歯を磨けることだ。そうすると唾液の
歯を磨きながら俺は、なんで昨日あんなに寝たんだろうかと考えていた。帰ってきたの五時くらいだったよな。半日近くも寝たことなんて今まであっただろうか。いや、無い。やはり数時間歩き回ったからだろうか。もしかしたら、久しぶりに早起きしたせいで時差ぼけみたいにもなってたのかもな。あるいは精神的に疲れていたのかもしれない。テストが終わって
俺は慌てて浴槽から出た。考え事をしながら浴槽に浸かっていたら、普段よりも長風呂になって体温が上がりすぎてしまった。歯を磨きながらだから、唾液の分泌が促進されて脱水症状になりやすいことも気をつけないといけないのだ。
俺はさっさと口をゆすぎ、風呂から出て体を拭き、部屋に戻った。
冬だというのにじっとしてても汗は全然引っ込まない。とりあえず水を飲んで水分補給しつつ、本棚の本の隙間に差し込んであるうちわを取り出し扇ぐ。
はぁ……。真冬に何やってんだ俺は……。
さりとて、外は今日も一桁台の気温。すぐに寒くなって汗は引っ込み、扇ぐのをやめた。
体温が普通くらいに戻ってからは寒さが身にしみるようで、俺は急いで服を着込み、髪を乾かしセットした。
出かける準備は万端整った。
とはいえ約束の時間まではまだまだある。せっかく時間稼ぎをしたというのに、逆に時間が余ってしまった。
まあ、いっか。
昨日買ったイヤホンや靴をおろすことも一瞬だけ考えたが、なんとなく今はそんな気分ではないと思い直した。
俺はさっさと家を出ることにした。
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