第52話 祝福
「
ザンッ
俺の一太刀が、魔物を一刀両断にする。
ゴウッ
八幡が無数の光刃を放ち、数多の魔物を塵と化す。
岩は・・・塞がれなかった。
巫女たる雪華が生け贄となれば・・・天照大神は動くはず・・・その予測が外れていたと言うのか・・・?!
白蛇の反応からして、確実だと思っていたのだが・・・
こうなれば・・・
「俺が・・・俺が、
「無駄だな」
俺の漏らした呟きを、朧湖が冷酷に撥ね除ける。
・・・く・・・
そう、巫女である雪華と、魔士である俺では・・・そもそも神との距離が全く異なる。
俺が生け贄になろうが、月読尊はかけらも心を動かさぬのだ。
俺が打ちひしがれていると、
「・・・主よ、何か勘違いしていないか?」
朧湖が困惑した声を出す。
「・・・勘違い?」
朧湖が困った様に告げる。
「天照大神が岩を動かそうとした結果、びくともしなくてな。で、流石に動かせませんでした、では格好がつかないじゃろう?既に
岩強すぎぃ!
伊邪那岐、別格過ぎる・・・
「お兄様、危ない!」
明菜が俺を突き飛ばす。
ゴウッ
俺がいた場所を、雷が貫く・・・
あたっていたら一瞬でこの世から消失していただろう。
「ぬ・・・いかんな。あれは・・・雷神」
朧湖が珍しく焦った声を出す。
「雷神・・・何故黄泉比良坂に?!」
八幡が驚きの声をあげる。
雷神って・・・
元素が狂った影響で、此処まで来れるようになったと言う事か・・・
その力は、正に神。
俺の従魔全員でかかっても、数秒ともたないだろう。
「お兄様・・・」
明菜が、怯えた声を出す。
・・・普段冷静な明菜が怯えているの・・・なんか凄く可愛い。
「明菜・・・大丈夫・・・」
実は大丈夫じゃないが、安心させる為、明菜を抱き寄せる。
さて・・・手詰まりだ。
岩は閉じないし・・・そもそも、雷神が上がってきてはもうどうしようもない。
地上は・・・終わるだろう・・・だが・・・
そっと明菜の仮面を外すと、口づけをした。
最愛の妻・・・最早逃げるのも敵わぬなら・・・最後まで・・・
明菜の震えが止まり・・・そして・・・力を抜いた。
そして・・・
・・・
・・・あれ、意外と死なない。
そっと見てみると、ぽかんとした顔で雷神が見ている。
・・・ん?
我に返った様に、雷神が再び進み始め・・・
く・・・
げこ
蛙の手が伸び、雷神の頭を掴むと、黄泉比良坂の中に投げ込んだ。
そして蛙が顔を覗かせる。
・・・?!
明菜の親・・・か・・・?
雷神をあっさり掴んで投げるって・・・強すぎないか?!
「明菜・・・良い人に巡り会った様ですね」
蛙から出てきたのは・・・優しい女性の声。
「お母様・・・」
明菜が蛙に駆け寄る。
「龍生殿、貴方も明菜を選んでくれて有り難う・・・私から、貴方達に祝福を授けましょうか?」
蛙の祝福・・・でも・・・最愛の人の、母親・・・是非。
「御願いします」
「では・・・祝福を・・・与えます」
ボウッ
俺と、明菜と・・・心に・・・温かいものが・・・
優しい力・・・涙が溢れてくる・・・
「あの人にも見習って欲しいです」
蛙は溜息をつくと、
「それでは明菜・・・さようなら」
蛙はそう言うと・・・黄泉比良坂の中に消え・・・
ゴゴゴゴ・・・
岩が動き・・・閉じた?!
まさか明菜のお母さんが?!
・・・蛙って凄いんだな。
--
黄泉比良坂が完全に閉じたことで、この世界は外の世界と再び融合した。
だが・・・黄泉比良坂のまわりに、かなりの瘴気が残ってしまった。
他の村人は全国各地に散ったが・・・俺と明菜、そして残った者は・・・黒森家として、この地で代々生きることにした。
明菜の体質、瘴気を霊気に変換・・・それが、子供にも受け継がれたのだ。
俺達は・・・幸せだ。
最愛の人と、その子供と・・・暮らせるのだから。
これから何世代かかるか分からないが・・・きっと、黒森家代々で、この地を浄化してみせる・・・
白谷家も、神社を続けるようだ。
そして・・・いつかきっと・・・くる。
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