第51話 久遠の約束

「・・・ああ。俺は雪華、お前の事が好きだ。俺は・・・お前と結婚したい」


雪華は頷き、続ける。


「魔女よ。貴方は、貴方の兄の事が好きですね?結婚したいと思っている」


?!


「巫女様・・・またその様な・・・」


明菜が困った様にそう言うが・・・

雪華の真剣な目を見て・・・


「・・・その通りです。明菜は、お兄様に恋をしています。許されるなら、お兄様と一緒になりたい・・・でも・・・」


明菜が、自分の仮面に触れる。


・・・


「そして、龍生、貴方も魔女の・・・妹の事を憎からず思っている」


雪華が告げる。


・・・


「・・・ああ。俺は、明菜の事も好きだ」


そう、それが偽らざる気持ち。


明菜が驚いて俺を見る。


「魔女よ、巫女として命じます。意中の殿方に告白しなさい」


・・・何故・・・?

というか、巫女はそんな事命令できるのか?


明菜は俺の方に顔を向け、


「お兄様、明菜は、貴方の事をお慕い申し上げております」


俺は・・・


明菜の仮面に手を掛け、外すと、


「俺は、明菜の事が好きだ。お前は気にしているようだが、顔がどうか、そういった事は関係無い。いや・・・むしろ、それもお前の一部だと思うと、愛しい」


明菜の術の力量であれば、本来、火傷を治す事等容易い。

それをしないのは、その顔も含めて、明菜だからだろう。

俺も・・・そんな明菜が愛しいと思う。

だが・・・


「だが、それ以上に雪華が好きだ。だから・・・俺は明菜とは結婚できない。俺は・・・雪華と結婚したい」


明菜の目から涙が流れ・・・


「お兄様・・・有り難うございます・・・そのお言葉だけで・・・明菜は十分です・・・」


明菜・・・すまない・・・


「雪華・・・これで良いの・・・か・・・?」


「うん・・・うん・・・」


雪華は、頷いた後、顔を上げ、


「魔女よ、巫女として貴方に命じます・・・兄の・・・龍生の伴侶として、龍生を幸せにしなさい」


「雪華?!」

「巫女様?!」


話を聞いてたか?!


「封印の岩を動かす・・・一つだけ方法が有ります」


・・・まさか・・・?!


「雪華、待て、それは・・・」


「・・・巫女様・・・?」


俺が制止の声を、明菜が訝しげな声を出す。


「巫女よ、まさか・・・」


白蛇が呻く。


「私が岩戸に入り、生け贄となります・・・その対価として・・・天照大神に祈念します」


・・・確かに・・・天照大神であれば・・・


「・・・それでは・・・巫女様が・・・」


明菜が、涙溢れる顔で懇願するように言うが・・・

雪華は微笑むと、


今生こんじょうでは、魔女、貴方に龍生を譲ります・・・」


雪華は俺の正面にくると、背中に手を回し、


「来世では・・・龍生、私はきっと貴方と結ばれます」


「・・・ああ、約束だ。俺は・・・来世では・・・雪華、お前と結ばれると誓う」


明菜が決意を込めた声で言う。


「私も、約束致します。私は、明菜は、来世では、お兄様と巫女様が結ばれる様、全力を尽くします」


そう。

それは・・・来世での約束。


「私からも、御神おんかみに奏上し、えにしを結んで頂こうか?」


白蛇がそう言うが、


「いいえ、白蛇。そこまでして頂く必要は有りません・・・ただ・・・私と龍生を、兄妹にして下さい」


くすり


俺と明菜と白蛇は吹き出した。

そこまでして頂く必要がない、と言いながら・・・

生まれついての婚約者とも言える、兄妹の関係を望むとは。


「約束しよう。巫女と龍生殿は・・・必ず兄妹の関係となるよう、奏上しよう」


それは大切な約束であり、そして・・・確定した未来と言えた。

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