第49話 失念
「雪華、今日こそは求婚を受けて欲しい」
「龍生・・・と、魔女・・・」
「巫女様、お兄様は本気です。どうして求婚を受けて頂けないのでしょうか?」
「私・・・自信が無いのよ・・・龍生の気持ちが・・・私に向いているかどうかが」
「雪華・・・」
・・・どうしたものか。
雪華は一体何を気にしているのか。
・・・言いつつ、実は想像がついている。
俺が村長になってから、いや、雪華が引き籠もってたせいもあるんだけど。
かつての村の中心的な立ち位置は見る影もなく、雪華は基本神社に籠ってばかりとなっている。
神事まで何故か俺がやらされている。
何故か俺に話が来てしまうのだ。
もしくは明菜に。
それで、自分に自信が無くなった、という事だろう。
お菓子作りは、かなり色々作れるようになったし。
細工もかなり上達したし。
明菜が色々教えた結果、色々上達しているのだけど・・・未だに自信喪失したままだ。
「雪華・・・どうしたら求婚を受けてくれるんだ・・・?」
「・・・明日結界が壊れでもしたら、求婚を受けますわ」
結界、黄泉比良坂とこの世を繋ぐ場所。
あり得ない条件を出してくる。
「巫女様・・・大変です、結界が破壊されたようです」
火巫女が慌てた様子で入ってきた。
・・・
「雪華、結界が破壊されたから、求婚を受けてくれ」
「お兄様、巫女様は明日、とおっしゃったのです。破壊されたのが今日であれば、条件は満たしておりません」
混乱しつつも、そう口にした俺に。
明菜が冷静に指摘を入れる。
「な・・・な・・・な・・・」
雪華は、呆然として何かを呟いていて・・・
「何で?!」
慌てた様子で叫んだ。
--
広場に村人が集まって、議論している。
「何で・・・結界の構築の儀式は完璧・・・術式も正しく構築され・・・結界にも問題無かったのに・・・100年はもつはず・・・」
雪華が呻く・・・
「しかし、実際に結界は破壊されました・・・ともあれ、今度こそ正しく結界を張る事が必要かと思われます」
村人が、雪華に懇願するように言う。
「いや、結界は正しく張られていた。雪華の儀式も、術具にも問題はなかったし。出来た結界も正しい事は確認している」
俺が言うと、
「月の魔士殿がそう言うなら、そうなのでしょうね・・・つまり、結界では防げない何かがあった、と」
村人が頷く。
「待って、ひょっとして私信用されてなかった」
「巫女様、今はそんな事より、話し合うべき事がある筈です」
雪華の発言を、明菜が遮る。
「元素が乱されていますね・・・これでは、結界が機能しない」
白蛇がぽつりと言う。
「・・・まさか、存在変換?!」
明菜が叫ぶ。
・・・そういう事か!
「考えていなかった・・・まさか・・・あの不思議元素は、この世界に適応し・・・等価に分かれたのか?!」
俺が呻く。
「ふふん、ようやく気付いたか」
朧湖が低い声で言う。
知ってたなら言えよ。
お前、本当に味方か?
「せめて私にだけは相談してくれれば・・・」
白蛇が無念そうに言う。
「・・・すまん」
俺は白蛇に素直に頭を下げた。
「どういう事なのですか?!何で話に混ざれないのですか!」
雪華が叫んだ。
おおっと。
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