第48話 駆除

「じゃあ、雪華、帰ろうか」


「えっ、せっかく来たのにですか?!」


「寒いからな」


「燃やして暖を取れば・・・」


何を燃やす気だ。


渋る雪華を引きずり、村へと向かった。


--


夜。


「い組、配置につきました」

「ろ組、準備整っています」

「は組、術式開始しました」


討伐組を動員しての、狩り。

逃がすと厄介だ。

専用の結界を構築、周囲に展開する。


雪虫の個体数、及び存在強度が、この世界の元素バランスを崩し・・・しかも、それが外の世界まで影響しているようだ。

ただの魔物かと思ったら・・・神霊の一種なのだろうか。

明菜が解析してほぼ確証は得ていたが、朧湖に聞いたらあっさり肯定した。


追い返す事は出来無い。

黄泉比良坂と違い、雪虫が何処から来るかは不明なのだ。


雪華には悪いが・・・雪華が寝ている間に処理させてもらう。

念の為、豊寿に眠り花粉を撒かせている。

白蛇や火巫女が眠ったのには笑えた。

笑えないけど。


「これより、雪虫の駆除を開始する」


女王種。

雪華が大切にしている存在・・・


「女王は、俺が殺す。他の者にその責を負わせるわけにはいかぬ」


宣言する。


せめて、苦しむ間も無いくらい、一瞬で。


女王と慎重に距離を詰め──


チッ


突如悪寒を感じ、避けた。

俺が居た場所を、蒼白い光が走る。

後ろの木々が貫かれ、いや、空間ごとねじ切られた様に無くなり。

そのまま飛び去った。


何あれ、何あれ?!

ちょっと強い雪虫とか、そんな存在じゃない。

こんなの、雪虫じゃない。


「お兄様!」


明菜が慌てて駆け寄ってくる。

手で制す。


「ご主人、私がやりましょうか?」


八幡が尋ねる。

八幡なら余裕だが・・・


「いや、こいつは俺が殺る」


集中。


「かしこみかしこみ、我が氏神、月読尊よ。願わくば、我に御力をお貸し給え」


身体に霊力が高まり。

そして、朧湖に貰った刀を抜く。

蒼白く光る刀身。


「告げる。天の叢雲あまのむらくもよ、その力を示せ」


神器の真名解放。

天の叢雲の刀身が碧色に光る。


刀から俺に力が流れ込み・・・また刀に流れ・・・


ザンッ


俺の一太刀が、あっさりと女王を無に帰した。

魔物なら瘴気となって散るが、謎の光になって霧散した。


「女王は始末した。後はみんな頼む」


討伐組と、そして俺の従魔達、俺と明菜・・・雪虫を探しては、殺す。

女王種は異常な強さをしていたが、他は普通の雪虫。

ほぼ無抵抗に殺されていく・・・逃したら面倒なので、そこだけ注意が必要だが。


徐々に寒さが和らぎ・・・


掃討が完了したら、季節に見合った寒さへと落ち着いていた。


--


季節は巡り、次の夏には、懐かしい真夏日が来た。

魔物は少なく、異常気象も無い。


雪華からは、求婚も、求婚の返事もまだ貰えていない。

そろそろ、お互いに身を固める年齢だと思うのだが。


火林は婿をとった。

・・・先を越された。


「明菜、雪華は何故求婚を受けてくれないのか・・・」


「分かりません・・・私には、人間の感情の理解は難しいので・・・2人で説得致しましたのに・・・」


俺は感情面で訴え、明菜は冷静に状況説明や義務等の話。

二面からの同時説得・・・かなり息が合った連携を見せているのだが・・・効果が上がらない。

他の人を説得する時には凄く効果的なのだが。

(求婚とかではないぞ?)


「・・・とりあえず、今日も行くぞ」


「はい、分かりました」


兄妹揃って何やってるんだろうな。

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