第43話 宮廷陰陽師筆頭
外は雨が降っている。
正確には雪が降っているのだが、結界の中が比較的温かい為、溶けて雨になるのだ。
「此処にいては、濡れてしまいます。屋根のある所に行きましょう」
使者を、長老の屋敷に誘導した。
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お茶と、菓子を出し、使者をもてなすが、
「何故この村は菓子など出す余裕が有るのだ?!本土では、皆飢えに苦しんでいるというのに」
「何だこれは・・・お茶か・・・?贅沢な」
やたらと偉そう。
偉いんだけど。
「それで、今日は何の御用でしょうか?先程も申し上げた通り、責任者は村の外に出ましたので、現在は責任者が不在で。陽の巫女様が長老代理となりますが、その者も今は不在でして」
「何故、陽の巫女まで不在なのだ?!」
「現在は、岩戸の行で御座います」
そう。
雪華は、あの日以来、岩戸に籠ってしまった。
火巫女曰く、帰ってお菓子を食べた瞬間、突如岩戸に向かったとか・・・
天照大神の時代より伝わる岩戸。
そこで籠れば、霊力を高めたり、奇跡を起こしたり・・・する事ができると言われているが。
・・・村の代表代行たる者が、皆を放置して行って良い事では無い。
皆顔には出さないが、相当困っている筈だ。
「なら、私が直接話す。案内せよ」
「申し訳有りません。行を無理に中断する訳には参りません」
無理に止めて良いなら、俺が既に止めさせてるよ。
「お兄様、お話だけでも聞いては如何でしょうか?」
傍に控えていた明菜が尋ねる。
「しかし・・・村の運営に関する決定となると俺では・・・」
・・・
・・・行政、分配、神事に防衛計画、貯蓄計画、術具管理に・・・気付いたら、殆ど俺がやってないか?
まあ、明菜がまとめてくれているし、各担当者がある程度自主的にやってるから、判断を仰がれた時に答える程度しかしてないんだが。
「我々も暇では無いのだ。言を弄して時間を稼ぐつもりであれば、我々も相応の措置を取る。田舎者には想像もつかぬ、都の洗練されし術、その目で見てみるか?」
低く、威圧を込め、使者が言う。
「やめておけ」
それを止めたのは、使者が運んでいた籠から出てきた、陰陽師。
「しかし
朧麿は緩やかに首を振ると、
「麿は、宮廷陰陽師筆頭にして、左大臣の地位にある者。
名乗る。
思ったより大物が来た?!
「私は、この村では3番目の地位にあたります、月の魔士の任に在る者です。名を、黒森龍生と申します」
「そうか。では、龍生よ。そなたを、防人の村の長老に任ずる。無論、月の魔士の任も兼任せよ」
任じられた?!
「
使者が驚きの声を上げる。
「黎利よ。麿は、宮廷筆頭の陰陽師、即ち、都一の術者である」
「はい、左様です」
朧麿の言葉に、使者が頷く。
「しかし、麿の術は、この男、龍生殿にとっては、児戯に等しい」
「な?!」
・・・あ。
うん、多分それは事実。
霊力の少なさに驚いた。
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