第37話 新たなる偉業

朝から、広場は慌ただしい。

結界更新の儀式が進められている。


防衛組が護りを固め、術具組が祠を組み・・・

手が空いている者は、術具組の指示に従い、物を運んだり、触媒を集めたり・・・


途中、戻ってきた雪華が事態を把握しておらず、


「これは何をしているのか?」


「はい、巫女様が大神実命オオカムヅミを大量に入手されたので、結界更新の儀の準備を進めております」


「・・・え、私が?!というか、大神実命オオカムヅミが有るのですか?!」


「はい。巫女様が入手されたそうです」


「今初めて聞いたんですけど?!」


「『何時もの様に』、『巫女様が』入手されました。とりあえず、月の魔士様から、『巫女様』が如何にして大神実命オオカムヅミを入手されたのかをお聞きしてはどうでしょうか?」


「貴方、絶対分かって言ってますよね?!そろそろ無理が有りますよね?!そろそろ限界だと思うんですけど?!」


「ほら、火林様が来られる前に、早く月の魔士様の所に・・・ほら、恋人同士、朝の挨拶とか必要だと思いますよ」


準備を進めていた、術具組と良く分からないやり取りをする一幕があった。

こっちに駆けてきた雪華を宥め、状況の説明をする。


「す・・・凄い・・・あんなに大量の大神実命オオカムヅミを・・・!流石巫女様!!本当に・・・巫女様は凄い!!!」


その後、火林が雪華を褒めちぎっていた。


「・・・はは・・・でしょう・・・?」


何故か涙目になって、雪華が火林の賞賛に応えている。


結界更新の儀式は、順調に終わった。

結界は無事更新され、これで当分、強力な魔物が黄泉比良坂よもつひらさかから這い来る可能性は無くなった。

魔窟も除去済、危険な魔物が流出している報告も無い。

取り敢えずは・・・一段落だ。


--


長老達が戻ってくる事は、無かった。

・・・そもそも、外に今の中の様子が伝わっているかどうかも分からないが。


明菜は、衣食住が足り、体つきも一般的な女性の様になった。

明菜は、普段から、狐の面を被り、頭を布で覆ってすごしている。


明菜は、相当強い霊力を持っている。

月の秘術も、布が水を吸い込むように覚えていく。

一応、俺よりは威力が低いので、当主の座は死守できそうだが。


更に、これは明菜と俺だけの秘密だが・・・明菜は、瘴気を取り込み、霊気として使う事ができるようだ。

黄泉比良坂で生きる為に必死に身につけたのか、生来のものなのか、あの蛙に与えられたのか・・・分からないが、黄泉比良坂で生きていられたのは、これが原因だろう。


「月の」や、「陽の」といった、家号を名乗る事ができるのは、当主だけだ。

その為、当主で無ければ、ただの「魔士」や「魔女」と呼ばれる。

この為、明菜の公式的な呼称は、「魔女」となる。


黒森家の特徴、という訳ではないのだけど。

明菜も、満遍なく才能を発揮していた。

術具の作製、防衛、探索、祭事、魔物の調伏・・・指揮をする事も、補助する事も、こなす。

黒森家の所属(妹、という事はまだ明かしていない)、という家の格も手伝い、村で確固たる地位を築いていた。


そう、全ては順調。

何事も無く──


「龍生ぃぃぃぃぃぃ??!!」


夜分、突如、雪華が涙目で突進してきた。

何事?!


「どうかされましたか、巫女様?」


戸惑った様子で、明菜が尋ねる。


「魔女・・・貴方は・・・」


「・・・はい?」


「龍生の妹って本当ですかあああああああああああ??!」


ん?

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