第34話 明日の昼に備えて
夜。
俺の屋敷に、雪華が来ている。
こうやって夜に会えるようになったのも、うるさいのが居なくなった効能か。
雪華の屋敷は、使用人は皆避難した。
今は、聖獣である
俺の屋敷は、使用人はほとんどが残った。
俺が党首になった際、元からいた使用人すべてに暇を出し、その後雇った使用人なので、その影響だろう。
今は、俺の自室。
俺と雪華、2人だけだ。
「龍生、残ってくれて、有難う・・・そして、ごめんなさい」
「何を謝る?」
「私の我儘で、みんなを・・・龍生を危険に晒して・・・でも・・・私・・・」
俺は、そっと雪華を抱きしめ、
「雪華、大丈夫だよ。俺が、雪華を悲しませる訳が無いだろう?」
「龍生・・・?無茶は・・・しないでね?」
「大丈夫。みんなで協力すれば、きっと。雪華を信じて残ってくれたみんながいれば・・・」
「うん・・・」
潤む目で、雪華が俺を見る。
「俺に、考えが有る。明日の昼・・・みんなを広場に集めて欲しい」
俺の言葉に、雪華が目を見開き・・・微笑む。
「龍生は、何時も助けてくれるね・・・有難う。本当に・・・有難う」
雪華の目から、涙が流れる。
本当に綺麗な涙だ。
見惚れてしまう。
最愛の人・・・
そっと雪華の唇を奪う。
「雪華、今日はゆっくり休んでくれ・・・明日は、一働きして貰うからな」
「うん・・・うん」
雪華が頷く。
雪華が、自分の屋敷へと戻っていく。
さて。
逝くか。
--
ブブブ・・・
不快な音波、不快な空気、濃い瘴気・・・
瘴気は、
その下の階層があっても、こうはなるまい。
恐らく、『入った人間』は、いや、『入ろうと思った人間』は、俺が初めてだろう。
あの大神、
跋扈する魔物は、俺達がどうこうできる存在では無い。
息を潜め、岩陰を進む。
想像していたような、洞窟ではない。
入口こそ狭いが、そこから急激に広がり、端の壁も天井も見えない。
紅い川や、蒼い川、輝く岩に、白い岩。
歪な形をした木々、遠くに居るはずなのに巨大さを実感できる魔物・・・
入口は、異世界への扉の様なものなのだろう。
何故俺がこんな馬鹿な事をしているか・・・
実は、
それだけなら、こんな危険は冒さないのだが・・・
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