第31話 世界よりお前の方が大切だ
降りる。
魔物の密度は、激減した。
──格の低い魔物では、生きる事ができないのだ。
ゴブ・・・
百目百足。
聖獣級の魔物。
ガッ
八幡と禍鹿が連携、そこに美海と無垢が援護・・・
容易く倒すが、これは数の暴力だ。
1対1では相当苦戦するだろう。
その後も、押し切られそうになりながら・・・なんとか、魔窟核に辿り着く。
ガッ
八幡が牙をたて・・・
ギギギ・・・バギィ
溢れ出る瘴気・・・そして・・・
ボウッ
壁が、光り始める。
地脈の脈動・・・
「出るぞ!」
魔窟で無くなった空洞も、地脈の流れを乱す。
その為、地脈が魔窟に侵された地形を、戻そうとするのだ。
魔物は既に、大半が闇となって消えている。
邪魔するものの居ない道を、速歩の術で走り抜ける。
ズン・・・
間に合った。
俺が走り出た直後、入り口が崩れた。
・・・まあ、美海と無垢がいるので、最悪、結界を張って土砂を避けるだけなんだけどね。
「お疲れ、助けてくれて有り難うな」
御礼と共に、頭を撫でていく。
・・・豊樹の頭って何処だろうな?
--
一夜明けて。
陽の巫女様が、魔窟を単独解放された。
そんな喜ばしい話題で、賑わっていた。
しかも、地脈の乱れから、
ごくり
俺は、我知らず、生唾を飲み込んだ。
新たなる偉業の追加。
しかも、とびきりの。
尚、別に俺が雪華より強い、という訳ではない。
数の暴力もあるが、そもそも、瘴気の中で普通以上に戦える、魔物を使役している事こそが異常なのだ。
祝福の中、陽の巫女様は、婚約者との逢瀬を希望。
休日でもないのに、俺は雪華と2人の時間が持てた。
俺は、笑顔で雪華に称賛の──
「何してくれるんですかあああああああああああああああああ」
2人きりになるなり、雪華は俺に馬乗りになってきた。
これは・・・
「待て、雪華。まだ日が高い。それに、こういうのはちゃんと式を挙げてから」
「わざとですよね?!龍生、いい加減私を隠れ蓑にするのは限界なんですけど!」
「待て・・・一体何の事だ、さっぱり・・・」
さて・・・シラを切り通せるか・・・
「もしもの為に、私の寝所には、強力な結界が張られてたんですけど?!強力な結界に一切感知されずに、見張りに誰にも気付かれないまま出征、魔窟を解放して、また人知れず帰還・・・行動も不可解だし、実現可能性も不可能なんですけど?!」
「いやあ・・・流石巫女様だなあ」
ぷくー
雪華が頬を膨らます。
あ、結構怒ってる。
「雪華・・・今日も可愛いね。愛してるよ」
「それ言っておけばごまかせると思っていませんか?!」
緩む頬を抑えつつ、怒った顔を維持しようとする雪華。
やばい、可愛い。
そっと雪華を抱き寄せ、
「おかえり、雪華。無事で良かった。もう・・・無茶はしないでくれ。俺は・・・世界よりお前の方が大切だ。だから・・・いざという時は、俺を頼って欲しい」
雪華は、ほうっと息を吐くと、俺の胸に顔を埋め──
「え、待って、今の私の台──」
そっと、雪華の唇を塞いだ。
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