第29話 札束
「符術、
雪華の叫びと共に、雪華が持つ呪符が燃え上がる。
そして、小太陽とも言うべき陽の球が草履蟲の群れに飛び込み・・・
ゴウンッ
激しい光、空気を震わす音が響き、熱波が走り・・・
蟲の群れの一画が消し飛ぶ。
予め霊気を織り込んだ、呪符を媒介にして発動する、雪華の秘奥義。
「
雪華が束になった呪符を矢継ぎ早に行使。
火球が次々と飛び、蟲を焼く。
作っておけばたくさん使える。
派手だ。
流石の
密度が高いのは出入り口付近だけだ。
そして、魔物の再生に用いる瘴気は回復に時間がかかる。
ガサ・・・
「
火林が叫ぶ。
火林に、黄金色の光りが纏われ。
ゴッ
流石の威力。
ジジ・・・
火林の周囲に纏う金剛力が、瘴気を防ぐ。
最も厄介なのは・・・漂う瘴気。
火林の強力な金剛力であれば、それ自身が結界となり、瘴気を防ぐが・・・
または、雪華の様に神気を纏っていれば、相当な抵抗力があるが・・・
俺の様な一般術士であれば、瘴気の中に飛び込むのは正気の沙汰では無い。
・・・ので、ちょっとずるをする。
「招来、
俺の喚び声に応え、月兎の
空気を読んで、式神モードだ。
「やっぱり、龍生の式神は可愛いね。今度私にも作って欲しい」
火林が羨ましそうに言う。
作れる訳ないだろ。
「これは奇跡的作品だからな・・・俺が普段作る術具が、どれだけ質実剛健か・・・知っているだろ?」
とりあえず使えれば良い。
俺の術具製作のコンセプトだ。
部下の中には、芸術性と機能性を兼ね備えた品を作る奴がいるが。
・・・が、残念ながら家柄や霊力は低いので、村での扱いは低い。
俺のまわりを、薄く、瘴気抵抗のある結界が纏う。
ギジ・・・
黄金蟲。
蟲系の上位種。
金属光沢のある体と・・・その見た目に違わない、高い防御能力。
そして、剛力。
草履蟲がまだ可愛いと思える存在だ。
スパンッ
火林の刃で、黄金蟲が散る。
「ははは・・・」
雪華が苦笑いしている。
「・・・火林、また腕を上げたな」
「これだけが私の取り柄だからね」
俺の賞賛に、自嘲気味に応える火林。
確かに、速度面では劣るものの、防御力と攻撃力は圧倒的だ。
まさに、村で第二位の実力者に恥じない強さ。
ちなみに、俺は村で5位とかそんな感じ。
黄金蟲は強力だが・・・作るのに相当な瘴気を使う。
一気に瘴気が晴れ・・・
・・・
「・・・火林さん?」
「・・・あ・・・う・・・」
奥に見えるは・・・黄金蟲と、草履蟲の群れ・・・そして、一段と濃い瘴気・・・これは・・・
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