久遠の約束
第23話 まどろみ
か細い糸が流れる。
それは、あったかも知れないし、無かったかも知れない・・・
いや。
有り得てはならない。
そんな、物語。
まどろみ。
それは、人間に許された、最上の贅沢。
無防備、それは即ち、罪なのだから。
仲間のお陰で許される・・・贅沢。
「
呼ぶ声で目が覚める。
まどろみから起きるのは・・・義務だ。
「ん──」
俺を起こしに来たのは・・・最愛の人・・・
「
「おはよう、じゃありません。今日は、森に遊びに行く約束でしょう!」
むくれた様な顔をしつつ・・・一方、このやり取りを楽しんでいるのだろう。
嬉しそうな色も隠せていない。
「悪い・・・つい・・・雪華に起こして貰いたくて、二度寝したんだ」
「・・・調子良い事を」
まだむくれたままで、俺を睨んだ後・・・
ぷ・・・くす・・・
どちらともなく笑い、吹き出す。
「おはようございます、龍生」
「うん、おはよう、雪華」
雪華の頭を撫でる。
幸せな一時。
うん。
まどろみが最上の贅沢、というのは撤回しよう。
愛しい人との逢瀬・・・それこそが最上の贅沢だと思う。
--
「
雪華と共に歩きながら、行き先の確認をする。
遊びに行く──流石に、文字通りでは無い。
木の実や山菜の有無を確認、または採取。
危険な魔物や獣の殺害、食料となる獲物の獲得・・・
そのついでの物見遊山だ。
名も無き
「
「承ります」
雪華と俺は婚姻が決まっており、また、お互いに想い合っている。
とはいえ、家の格が圧倒的に異なるのだ。
その為、村の中では、お互いに口調に気をつける必要が有る。
けじめ、だ。
雪華は、村の最上位の家、陽の神たる
俺は・・・村では3位の格となる、
本来はあり得ない縁談だ。
では何故こうなったかと言うと・・・
雪華の一族、白谷家、序列2位の
それ故、序列3位である俺の一族、黒森家に白羽の矢が立った。
黒森家は俺1人しか子供が居ない為、黒森家でも後継者に困っていたのだ。
さて・・・確か、
「霧谷の方に足を向けてみましょう」
「構わぬ」
巨大な猿の魔物を目撃したらしい。
火林は力が強いが、早い動きが苦手だ。
魔物に逃げられた場合は、俺に調査指示を出してくる。
さて──
「疾風、付与」
足に疾風の色を纏わせる。
縮地の法。
基本的な技だ。
「御神よ」
雪華の祈り。
雪華の足に、神秘が宿る。
縮地の法の超超上位互換だ。
雪華程の家の格であれば、直接
「行きましょう」
告げ、走る。
勿論、雪華の方が圧倒的に早いのだが、そこは俺にあわせてくれている。
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