第22話 運命の人

明菜は、俺の家に住む事になった。

・・・というか、雪華が迫ってこないように抑止力だ。

明菜の部屋に比べたら遥かに狭い思いをさせているのだが、気にしていないらしい。

空き部屋がちょうど1つあったので、そこに住んで貰っている。


毎日、陰陽の修行と、雪華からの祈祷の修行と・・・2種類の修行をしている。

うちにも色々あったんだなあ・・・

俺、一応跡取りの筈なんだが、雪華にばかり伝承されて、俺には一切匂わせもされていなかった。


がたんごとん


実家に向かう途中、池の上の蜘蛛を見る。


ひらひら


手、いや、脚をふってきた。

手をふりかえしておく。


「蜘蛛?!」


明菜が叫ぶ。

明菜も、霊力?とやらが上がってきてるんじゃね?


そして・・・


あれ、滅茶苦茶強いわ。

そりゃインスタッターに投稿できるわ。

吊るした和紙を切る、とかいくら続けてても、アレには絶対に敵わない。

そう感じとれるようになっている。


実家では、親に挨拶して、結婚を前提に付き合っているとか、明菜も神社の行事を覚える為に時々実家に来るとか、色々と親と話している。

俺は横で聞いているだけだ・・・明菜に負担をかけてしまうなあ・・・


結婚の時期は、大学を卒業してから、という話に落ち着き。

次は黒森家の方にも挨拶に行くという話が出て。


色々あって、帰宅したのは夜になってしまった。


夕飯は明菜が作るといって、台所で調理中。

雪華が吠えている。


「お兄様、魔女は偽装彼女なんですよね?!何ですか今日のやりとり?!何であんなに順調に進んでいるんですか?!おかしいですよね?!」


・・・?


「雪華ちゃん、どうしたの?」


鼻歌を歌いながら料理をしていた明菜が手を止め、雪華に話しかける。


「そもそも、偽装って何だ?今日の話を聞いて、偽装彼女に見えたのか?」


事実なんだが、何故こんなに確信をしているんだ・・・?

これも厨二病のなせるわざ・・・


「お兄様、魔女、分かっているの?!両家に紹介とか、挨拶とか、引き返せないレベルになっているんだよ?!」


「俺は引き返すつもりはないぞ?」


俺は演技を続ける。

必要なのは、揺るがぬ意思。


「ん・・・うん」


頬を赤らめて、頷く明菜。

可愛いなあ。


「因果は・・・運命はどうなるんですか?!」


雪華が叫ぶ。

・・・どうしたもんかなあ・・・


「運命は・・・勝ち取るものだよ」


明菜が、格好良い事を言う。


「魔女・・・貴方・・・お兄様・・・そうなの・・・ですね・・・?私が入る余地は・・・最初から無かったのですね・・・?」


雪華は、肩を落とすと、そう確認する様に聞く。


「ああ、そうだ」


「ごめんね、雪華ちゃん」


俺達がそう告げると、雪華はうつむき・・・


「約束──」


そう呟くと、


笑顔で顔を上げる。


「分かりました・・・きっとこれは、私の運命・・・」


そう言って、微笑んだ。


・・・症状、改善すると良いなあ・・・


--


夜。

俺の部屋に、明菜が入ってきた。

・・・パジャマ姿、可愛いなあ。


「明菜」


「龍生」


明菜が俺のベッド、俺の横に腰掛けると、


「ねえ龍生・・・今日の事、さ」


どの事か・・・さっきの事か・・・それとも実家でのどたばたか・・・


「私達、偽装の恋人・・・その話だったけど・・・」


ぽふ


明菜が俺に顔を埋め・・・


「私、貴方の事が好き・・・です。私を、貴方の彼女にして下さい」


どくん。


強く心臓が締め付けられ、汗が吹き出る。

強い背徳感、後悔、躊躇・・・これは・・・愛しいという感情。

抱きしめると、懐かしさと、自身の半身を取り戻したような充足感・・・


そう・・・


「明菜・・・俺も・・・お前が好きだ。偽装じゃない。俺と・・・つきあって欲しい」


思えば。

一目惚れだった気がする。


最初から。

明菜は運命の人だったと思う。


自然と、分かり合える。

まるで長年連れ添った伴侶の様な・・・そんな・・・


同時だった。

お互い、唇を重ね・・・そして・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る