第15話 神降し

うろ覚えだが・・・確か・・・


かしこみかしこみオン我が氏神ウジラ月読尊よラルラツクヨミ一片なる炎テライラエン賜わせ給えハダラ!」


ボッ


俺の手の平に、サッカーボールほどの炎の塊が現われる。


ふよふよ・・・


消えろ、と念じると、炎がかき消えた。


あ、明菜とお父さんの目がこっちに釘付け。


こほん


お父さんが咳をすると、


「それで、龍生君、だったかな。娘と結婚して、うちの家を継いでくれる話だったかね?」


その話では無かったよね。


「・・・俺、白谷神社の跡取りなんですが・・・」


俺の言葉に、お父さんががっくりと膝を着いた。


--


「ふむ・・・白谷神社の事は分からないが・・・人格が変わったのであれば、狐憑きが考えられるな」


お父さんに一部ぼかして事情を話し、相談に乗ってもらう。


「狐・・・そうなると、除霊。龍生の家の専門分野よね」


明菜がう~んと、考える様に言う。


「除霊・・・俺、苦手なんだよな。霊感全く無いしな」


もふ?


服を着た白兎が、小首を傾げる。

うん、可愛いよ。


「一般的には狐憑きだが・・・白谷神社の家系であれば、別の可能性が有る」


お父さんがそこで一旦言葉を切る。

そして、声を低めて言う。


「すなわち・・・神降し」


「俺の事を兄と認識してるから、それは無いかな」


「うん、違うと思う」


お父さんの意見を、俺と明菜が否定する。


「でも、龍生の実家に行ってみるのはアリかも?何か分かるかも知れないよ?」


「・・・確かに」


実家の蔵とか調べれば・・・?


「これから、白谷神社で資料を調べてみます」


お父さんにそう伝えると、明菜と一緒に白谷神社へと向かった。


--


「うちの周囲程は雰囲気出てないね」


明菜が言う。

黒の森で歩きにくそうにしていたが、うちの神社の階段は普段と変わらず歩けている。

うちはただの田舎の地元の小さな神社、祀られている神も伝承が消失していて・・・そもそも──


「初めて来たけど、綺麗な神社だね」


明菜が驚いたように言う。

が。


「物は言いようだよな。歴史が無い、とも言う。何度か消失して、建て直してるからな。・・・正直、蔵の中にも古い書物はない」


ボッ


赤く長い髪の、巫女の女の子達が歩いて来る。

火巫女、と言う役目?の女の子達で、顔も声もあまり見分けがつかない。

多分、近所の子供が働いているんだけど、名前を未だに聞けてない、というか、多分代替わりしてる。


「お久しゅう。坊っちゃん、今日はどうしたかえ?」


火巫女の一人が尋ねる。


「お久しぶり、火巫女。実は、うちの歴史とか、そういうのを調べたくて・・・ちょっと困った事になっていてね」


火巫女が小首を傾げ、


「うちは定期的に燃えはるから、古い資料は有りませんえ?」


ですよね。


「そちらのお嬢さんは、坊っちゃんの彼女さんかえ?」


別の火巫女が尋ねる。


「ああそうだ」


肯定しておく。

明菜も空気を読んでくれ、顔を赤くして微笑み、こくり、と頷く。


・・・可愛いなっ。

演技達者ですね!

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