第13話 銃刀法違反

「いや、おまじないみたいなのがあって、それの後じゃないと、入れない筈なのに・・・いや、ただの厨二だから、気の持ちようなんだけど・・・」


・・・


此処が厨二の本拠地・・・

確かに、何か起きそうな感じに、空気が重い。


ガサ・・・


8本目の犬が、茂みから飛び出してくる。

・・・品種改良?

よく見えそうだね。


で、お腹を見せて転げ回る。

仕方がないから撫でてやる。


「龍生、待って、此処、空気が重いから、なかなか進めない・・・の!」


「もふってるからゆっくり来て良いぞー?」


「何をもふってるの?!」


犬は満足したのか立ち去った。

入れ替わりで、明菜が追いついてくる。


「とにかく・・・これで・・・半分くらい・・・うう・・・」


明菜がぐったりしているので、支えてやる。


「あれじゃないかな・・・多分なんだけど・・・」


そう、単純な話だ。


「その、先天性厨二症候群とやらのお陰で・・・それっぽい雰囲気に感受性が強い・・・で。結果、ただの森なのに、進みにくい、と感じているんじゃないかな」


俺は厨二とやらはあまり信じていないので、受ける影響が少ない、と。


--


木に激突しそうになる明菜を慌てて止めたり、虚空で何かジェスチャーしてる明菜を待ったり・・・そうこうしつつ、雰囲気のある洋館に着いた。

・・・あれ・・・普通に道路に面してるんですけど・・・

あっちから来たら楽なのでは?


シャクリ


まだ完熟してない桃を噛りつつ、左手で明菜の手を取り、進んできた。


「此処が・・・明菜の家か?」


「うん・・・雰囲気あるでしょ?此処で育ったせいで、昔の私は結構重度の・・・ううう・・・」


「格好良いし、良い雰囲気だな。実家の様な安心感が有るよ」


「そう言ってもらえると嬉しいわ。実家に友達を連れてきたのは初めてだから」


まあ、黒の森だしね。

案外、反対側からは道路通ってたのかな?


ふと、明菜が何かに気づいた様に尋ねる。


「何を食べてるの?」


「途中に沢山なってた桃だな・・・ひょっとして、駄目だったか?」


「いえ、大丈夫よ。桃なんて記憶にないし、見た覚えもないのだけど」


結構大きい木だったけどな。


食べ終わった種を放る。

ほら、此処にも芽を出せ。

俺の願いも虚しく、地面に当たった種は、光の泡になって虚空に消えた。

何でだよ。


「この家には、沢山の修練場があるわ。この池も・・・水の上を歩いたり、水の術式を行使したり・・・そういった修練に使うの」


池の中から、龍が顔を出す。

顎の下を撫でてやると、目を細めてゴロゴロ喉を鳴らす。


何だか、一生分の超常現象体験してる気がするんだが。

これがこの家に伝わる厨ニ力・・・結構なお手前で。


別れ際に、龍が刀をくれた。

明菜に当たらない様に抜いてみると、青く透明な刀身・・・美しい。


鞘にしまい、腰に付ける。

これって、銃刀法違反とか大丈夫なんだろうか?


「あっちでは弓の修練、あっちでは流鏑馬・・・武道も色々叩き込まれたわ」


「流鏑馬は、神社でもやってたな」


的を整備している黒い生き物が気になって仕方が無い。

あれ中に人が入ってるって骨格じゃ無いんだが。

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