第5話 私達は結ばれる運命なのですから
「どうしました?」
雪華が首を傾げてこちらを見る。
目が蒼く光るのが幻視される。
背中に汗が滴り落ち・・・
「お身体に異常は無い様ですが、発汗と悪寒、激しい動悸が見られますね。今日は早く休まれますか?」
俺の両肩に細く美しい手を置いていた雪華が、手を引っ込める。
「・・・ああ、今日は早目に寝るよ」
夕食・・・多分美味しいのだけど、あまり味は分からない・・・というか、雪華、料理なんてできたっけ?
いや、考え過ぎだ。
雪華はふざけてるだけ、ふざけてるだけ・・・
「こら、有り難いけど、今は駄目でしょ」
雪華が、何も無い虚空に話しかけている。
大丈夫、大丈夫。
カラン
お皿がテーブルの上に落ちる。
何処からだよ。
「ご飯食べたら、御背中を流しますね」
「1人で入るよ?!」
一緒に入らねえよ。
ぷくう
雪華が頬を膨らます。
「お兄様が、約束をお忘れになったのは理解しました。それは良いんです。私達は縁が結ばれているのですから、必ず一緒になれます」
なれねえよ。
まず、兄妹だよ。
雪華が嬉しそうに言う。
「何せ、たった2人の兄妹ですからね」
何せ、じゃねえ。
まずそこが問題だよ。
法的云々以前に、俺が妹を恋愛対象や伴侶として見れねえよ。
「いや・・・だからな、雪華。俺はお前を恋愛対象には見れない。お前は妹としか見れないんだよ」
雪華は嬉しそうに、
「はい、私もです。恋人、というより夫婦ですよね。何せ、兄妹ですから」
も、じゃねえ。
全然通じない。
古今東西、兄妹は夫婦の代名詞ではない。
「お兄様!」
雪華が抱きついてくる・・・この当たるものは・・・?!
こいつ・・・つけてない。
思わず離れる。
「馬鹿、やめろ」
雪華が心外そうに言う。
「何故ですか?私達、兄妹ですよ?」
「兄妹でも、何でも、駄目だ」
何処の世界に、高校生にもなって抱きつく兄妹がいるのか。
「まあ良いです。お兄様が思い出して下さるまで、ずっと待ちます。私達は結ばれる運命なのですから」
雪華が微笑む。
あのなあ・・・
「いや、雪華・・・俺、彼女いるからな」
偽装彼女だけど。
「嘘ですね」
微笑んで否定する。
何でだよ。
嘘だけど。
「お兄様は、私以外とは縁ができない筈です」
ドヤ顔で言う雪華。
いや、そりゃ、俺非モテ人生だけどさ。
人を好きになった事は無いし、好かれた事は・・・無いとは言わないけど、告白された事は無い。
頭の出来は中の上、顔はそこまで悪く無く、スポーツは全国区なのだけど。
・・・スペック、低くないよな?
「いや、彼女がいるのは本当だからな」
「ふふ、そういう事にしておきますね」
雪華が苦笑する。
「分かりました。彼女がいるお兄様のお風呂に侵入したりはしませんよ」
引き下がってくれた。
「私も明日は入学式ですしね。早寝します」
明日だった。
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