第3話 私も陸上部入ろうかなあ

「そうだな・・・ここは黒森、前に出て解いてみろ」


「2と-3と6です」


「・・・正解だが、途中式も書け」


授業聞いてなかったんじゃなかったのかよ。

数式も書かずに答えだけ当てるとは・・・流石だな。


「はい、分かりました」


黒森が前に出て・・・さらさらっと、解いていく・・・おおっ。

解の公式で解く問題かと思ったら、ああやればちゃんと因数分解出来るのか。


「これでよろしいですか?」


「・・・正解だ・・・」


教諭がまじまじと黒板を眺めている。

教諭も気付いてなかったのかな。


どうやら頭が良いらしい。


--


明菜を連れて、食堂へ。

隣になった縁で、案内する事にしたのだ。

放課後にも、ゆっくり学校を案内する予定だ。


「ここの券売機で買って、あそこに並ぶか・・・もしくは、購買で買うか・・・」


「ふーん、種類が豊富だね」


「ああ。なかなか食環境は充実していると思う」


素晴らしい事だ。


明菜がすっとこっちを見る。

俺が頷くと、明菜は席の確保に向かった。

さて、食券を買って・・・


カツ定食と、日替り定食を買って、明菜のもとへ向かう。

今日はうどんとおにぎりとサラダだ。

明菜が、日替り定食を受け取り、代金を俺に渡した。


「ん、美味しいね」


明菜が微笑む。


「ああ、此処のうどんはかなり美味しい」


この学校の話、明菜の前の学校の話・・・

昼食休憩が終わる前に、教室へと移動した。


--


放課後、明菜に学校の案内をする。


「ここがグラウンド、陸上部とサッカー部、野球部が、交代で使っている。今日はサッカー部だな」


「ふーん、結構上手そうだね。龍生はどこの部なの?」


「俺は陸上部だな」


「陸上部かあ・・・どの種目か想像がつかないな。どれでも出来そう」


まあ、どれも出来るけどね。


「一応、専門は長距離だな」


運動は得意だ。

長距離走は、全国レベルだったりする。


「私も陸上部入ろうかなあ・・・運動は得意でもないんだけどね」


明菜がぽりぽりと、頬を掻く。


ヒュッ


ボールの流れ弾が飛んできた。


す・・・


明菜が足をボールに添え、


ヒュッ


そのまま蹴り返す。

綺麗な軌道を描き、ボールが飛ぶ。


ぽす


こちらに慌てて駆けようとしていた学生の手に、すぽっと収まる。

ハンドだよ。


「うちは文系の学部も結構盛んだが、良いのか?」


「ん。気分を変えてみたいからね」


まあ、運動が苦手でも、運動部に入れば体力もつくしな。


「じゃあ、次の場所に行こうか」


明菜の手を取る。


すっ


明菜が体を寄せてきた。


「うん、御願い」

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