第2話 俺、恋人なんていないぞ?

どうする・・・どうすれば良い・・・?


とにかく・・・


「とにかく、俺はお前とは付き合えない。彼女がいるからな」


・・・


ひく・・・えぐ・・・


嗚咽。

マジ泣きしているようだ。


みしっ、みしっ・・・


妹が遠ざかっていく音が聞こえた。


いや、何、この罪悪感。

これ、本気で思い込んでるの??

こんな事有るの?


降って沸いた問題に頭を抱えつつ・・・


お腹が空いたし、お風呂も入りたかった。


--


翌日、何とか勇気を出して部屋の外に出た。

妹は部屋に籠もっているようだ。

朝食を手早く済ませ、着替えて、家を出る。


さて、どうしよう。


俺、恋人なんていないぞ?

妹は完璧美人、良く妹と比べられて育った。

頭も良いし、スポーツも万能。


あ。

別に、妹とは普通に話していたし、妹を恨んだりはしていない。

そう、普通の兄妹だった。


さて、どうしたものか・・・


そこそこ話す、同じ陸上部の結羅ゆいら、元学級委員の早川はやかわ、近くの席のおおとり・・・いや、流石に、頼める程の間柄ではない。

・・・というか、友達以上恋人未満って感じの気配を感じるので、恋人のフリなんて頼んだら関係性が進んでしまいそうだ。


悩みつつも、顔には出さず、友人と談笑。

今日から3年生だが、あまりクラスの面子に変化は無い。


いや、無かった。


「ほら、席につけ」


教諭が入ってくる・・・女生徒を連れて。


「転校生の黒森くろもりだ。分からない事が多いと思うから、みんな教えてあげてくれ」


ちなみに、教諭は現国を全クラス担当しているので、知らない学生はいない。


「席は・・・そうだな、空いてる席、花田はなだの横に座るように」


花田。

俺の2つ隣に座っている女の子。

つまり、俺の隣でもある。


学年が変わり、みんな好きに座っている状態。

てっきり席替えがあるかと思ったのだが、結局そのままの席となった。


「初めまして、白谷龍生しらたにりゅういだよ」


隣になったので、挨拶しておく。


「初めまして。黒森明菜くろもりあきなよ」


改めて見ると・・・整った顔立ち、人好きのする顔。

結構人気が出そうだな。

そんな印象の女の子だった。


--


授業中、明菜は教科書を持っていないので、俺が見せてやる事にした。


ぴと、と、明菜が顔を近づけてきて、教科書に集中している。

勉強熱心だなあ。


ノートにさらさらと走り書き・・・おい、それ教科書の問題じゃない。

少しアレンジされた結果、難易度が跳ね上がっている。

授業に集中しろよ。

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