妹が兄である俺にガチ恋して迫ってくるので偽装彼女を作って逃れようと思う。略称は妹ガチ恋で良いと思う。

赤里キツネ

叶えられし願い

第1話 お兄様、ごはんにしますか?お風呂にしますか?それとも私ですか?

「お兄様、ごはんにしますか?お風呂にしますか?それとも私ですか?」


別れて暮らしていた妹と、共同生活。

その初日。


俺を出迎えた妹は、そう尋ねた。


おかしい。


「・・・雪華せっか・・・?何を言っているんだ・・・?」


冗談・・・という顔にも見えない。

というか、俺に抱きついてきているのが、おかしい。

俺は高校3年、妹は高校1年。

決して、抱きついて良い年齢ではない筈だ。


俺の戸惑った様子を見て、妹が可愛らしい様子で小首を傾げ、


「お風呂、御背中をお流しすれば宜しいでしょうか?」


よろしくない。


--


俺と妹は、2年程離れて暮らしていた。

別に、深い事情が有る訳ではない。

高校進学の際に1人暮らし、妹も近所の高校にしたので同じ部屋に住む事に。


俺と妹は、別に普通の関係だった。

決して仲が悪くは無いが、良すぎる事は無い。


なのに・・・


「お兄様?!お兄様、何故開けて頂けないのですか?お部屋に鍵が掛かっていては、子をなせませんよ?!」


「なさねえよ?!」


しん・・・


1呼吸置いて、


「お兄様、申し訳有りません・・・そうですよね・・・高校卒業までは避妊はしますよね!」


「そういう問題じゃ無い!」


何故こうなった・・・?


繰り返すが、俺の妹は別に、お兄ちゃんだ~い好き、とかそういう人種じゃない。

いや、なかった。

少なくとも、正月に実家に帰った時には。


「何が・・・どうなったんだ・・・?良いか、雪華。俺達は兄妹だぞ?」


「そうですよ?だから結婚するんですよね」


何でだよ。


本気で何でだよ。


おかしいだろう。


「あのな・・・俺は、お前とは、結婚しない」


しん・・・


静寂。


ややあって。


「そんな?!お兄様と私は結婚する運命なのですよ?!」


「何でだよ!」


おかしい。


・・・どうすれば・・・そうだ・・・


「雪華、俺はお前とは結婚出来ない。俺には彼女がいるからな」


「・・・?!約束はどうしたのですか?!」


約束?!


断言しよう。

繰り返すが、俺と妹は、別に凄く仲が良いとかではない。

俺が約束を忘れていて、実は子供の頃に書いた婚姻届が出てきて・・・という事もない。


「約束なんて、していないぞ。いつ俺が約束したんだ?」


子供の頃とか言うんだろうけど。


「え、前世ですけど?」


さも当然といった様子で、雪華が言う。


・・・


そういう事かああああ。


俺は全てを悟った。


妹は・・・


厨ニ病を発症していたのだ。

しかも重度の。

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