(52)海の中の温泉
BGMは、初音ミク達が歌う「もののけ姫」です。
https://youtu.be/F5RT8u_moh8
海に面した洞窟温泉や露天風呂は先週に紹介しましたが、今週は海の中の温泉です。干潮時だけ入浴できる本物の海の中の温泉。それは屋久島にありました。
仕事を初めて数年立った頃、夏季休暇を取って屋久島に行ってきました。まだ世界遺産に登録される前ですねー。目的は「縄文杉」を実際に見たいのと、宮之浦岳(千九百三十五m)に登る事。
ところが、屋久島へ行くまでが大変でした。
京都を出発する前日、鹿児島は集中豪雨で街が水に浸かり、日豊本線や鹿児島本線の線路も土砂で流されて不通になりました。
寝台特急「明星」で鹿児島に行く予定で切符を買ってましたが勿論運休です。
折角取った夏休。
「なんとか少しでも鹿児島に近づきたい。九州まで行ったらなんとかなるやろ」
と新幹線に乗ります。博多についても、そこからは在来線が運休です。「列車ホテル」として開放された新幹線の車内で一夜を明かしました。
次の日の昼になって漸く在来線が動き出します。鹿児島県内の川内まで電車で行き、そこからはバスの代替運行で西鹿児島駅(現在の鹿児島中央駅)へ。
駅前は水は引いていたものの土砂や流木で悲惨な状況でした。なんとか繁華街まで行き、たまたま営業してたラーメン屋で「鹿児島ラーメン」を食べます。味は……、忘れました。すいません。
後年、家族旅行で行った時もラーメンを食べてましたから、美味しいラーメンのハズです。
ほんで駅前に戻ってきて、駅舎の軒先の乾いた泥の上で野宿です。
次の日は、幸いにも屋久島行きのフェリーは運行してたので、途中西郷さんの銅像を見ながら港まで歩いて行って船に乗ります。
波こそ穏やかでしたがガス(霧もしくは雲)が掛かってて何も見えませんでした。そんな中どうやってフェリーを運行してたのかはさて置き、屋久島に近づくとガスの向こう海の上に聳え立つ巨大な山が突然現れました。
頭に浮かんだ言葉は、「エルドラド」。アンデスの山奥に存在するとという伝説の黄金郷・エルドラド。それぐらいの衝撃がありました。
屋久島は島全体が山です。最高峰の宮之浦岳は1900メートル級で、それ位の山なら幾つも登ってましたが、海抜0メートルから聳え立つ山々は圧巻でした。
その日は港から少し離れた所の安宿に泊まります。宿の風呂は普通の風呂なので、
「少し行った所に温泉があるよ」
と言われて20分程歩いて、街の公共浴場の温泉へ。銭湯の温泉版。地元の人が使う普通の公共浴場でしたが、格安で入れました。お湯は……、憶えてないです。スイマセン。
次の日は宮之浦岳に登ります。その日は台風一過みたいに快晴でした。縄文杉を目指して登山開始。
三代杉、ウイルソン株、大王杉等を見ながら森を登って行きます。大雨の後の快晴ということで森の緑は生き生きとしてました。
後にスタジオジブリのアニメ「もののけ姫」の舞台のモデルになった森はめっちゃ綺麗でした。綺麗すぎて少し怖くなったのを憶えています。
「何しに森へ来た!」
と問われてる気持ちになります。自然の驚異と言うか、
「人間とは、自然の中ではなんとちっぽけな存在や」
というのを実感させられました。そんな恐怖心を懐きながら登っていきます。そして夕暮れ前に「縄文杉」に到着。
眼の前に現れた縄文杉は驚愕でした。やっぱり怖かった。光の加減で幹が顔に見えるんですよ。そして何か怒られてるよな気になり、恐ろしくなってしまいました。それくらい尊大でした。自然の神秘です。
縄文杉を更に登って行くと山小屋(避難小屋)があったのですが、満員やったんで仕方なくヘッドライトを点けてテントが張れそうな場所を探して稜線を歩きます。ほんで適当な大きな一枚岩を見つけ、その上にテントを張りました。一応、ズリ落ちたり風で飛ばされない様にザイル(ロープ)でテントごと固定しました。
その日の夜は遮蔽物や明かりの無い、満天の星空を楽しみます。丁度ペルセウス座流星群の極大日と重なったんで沢山の流れ星を観測出来ました。天空の3分の2はあるやろと思うぐらいの長ーーーい流星は感動でしたね。天体観測にはモッテコイの場所かも知れませんね。
遠くの海には漁火や種子島の「種子島宇宙センター」の灯りが見えて、いい雰囲気でした。
次の日、朝起きてびっくりです。テントを張ってた岩は、なんと断崖絶壁の上の岩やったんです。危うく数百メートル下に落ちるところでした。
そして宮之浦岳の山頂を踏んで下山。
汗でぐしょぐしょやったんでレンタカーを走らせて温泉を探します。
地元の人に聞くと、ただで入れる温泉があるとか。
《温泉 その29》平内海中温泉(鹿児島県熊毛郡屋久島町平内)
屋久島のほぼ最南端の岩場の海岸にある無人の平内海中温泉(単純硫黄泉、アルカリ性単純温泉)。
脱衣所は無く男女混浴で、下着や水着での入浴は禁止だとか。残念ながら私以外に若くて可愛い女の子はおろか誰一人いませんでしたけどね。
早速全裸になって入ります。自然に侵食で出来た穴にお湯が勝手に湧いて溜まってるって感じの、それでも少し熱め目のワイルドな温泉です。
眼の前の雄大な海を眺めながらの入浴は、「気持ちいい」の一言ですね。
お湯は少し熱かったんですが、暫く浸かってるとそろそろ干潮も終わり、潮が満ちてきます。ほんで海水と温泉が混ざり始めた頃が丁度いい湯加減で気持ちよかったですー。
でもそれはほんの一時のこと。アッという間に海水が満ち溢れ、最後は海の中に消えていきました。
正に「海の中の温泉」でした。
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