第11話

 猛暑の夏が襲いかかりました。


「旱魃[かんばつ]がひどいの」少女は屈んで言いました。


「わたしの知ったことじゃない」地雷は言いました。


「今年は雪が少なかったみたい」少女は言いました。


「わたしの知ったことじゃない」地雷は言いました。


「小麦が不作なの」少女は泣きました。


「それは残念だ」地雷は言いました。


「川の水が干あがりそう」少女は言いました。


「わたしの知ったことじゃない」地雷は言いました。


「戦闘が激しくなったの」少女は腕を組んで膝頭にのせました。


「悲惨だ」地雷は言いました。


「村の人々が嘆いているの」少女は言いました。


「わたしの知ったことじゃない」地雷は言いました。


「ソ連兵をよく見かけるよ」少女は目を細めました。


「関わるな!」地雷は激しく言いました。


「秋が近づいたら姉さんが結婚するの」少女はうれしそうに言いました。


「それはなによりだ」地雷は言いました。


「幸せになって欲しい」少女は言いました。


「わたしの知ったことじゃない」地雷は言いました。


「たくましい男の子を生んで欲しい」少女はさらに言いました。


「武器を持たない男に育てろ」地雷ははっきりと言いました。

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