第7話

 冬が過ぎて春になりました。


「また戦闘が始まるよ」少女は屈みこんで言いました。


「悲惨だ」地雷は言いました。


「アフガニスタンはソ連なんかに決して負けない」少女は力強く言いました。


「わたしの知ったことじゃない」地雷は言いました。


「明日から学校が始まるの」少女は言いました。


「それはなによりだ」地雷は言いました。


「家の仕事があるから行くなと母さんが言うの」少女は言いました。


「当然だ」地雷は言いました。


「なぜか父さんは学校に行けと言うの」少女は言いました。


「不思議だ」地雷は言いました。


「ふふ、あなたもそう思うでしょ?」少女は笑いました。


「当然だ」地雷はむっとしました。


「わたし勉強が楽しみ」少女は言いました。


「それはなによりだ」地雷は言いました。


「でも校舎が破壊されたから空の下で授業を受けるの」少女は言いました。


「悲惨だ」地雷は言いました。


「ヘリコプターをよく見かけるの」少女は目を細めました。


「機関銃に気をつけろ」地雷は力をこめて言いました。


「アフガニスタンの空にヘリコプターは似合わない」少女は言いました。


「わたしの知ったことじゃない」地雷は言いました。


「村の男の子が凧を揚げていて撃ち殺されたの」少女は言いました。


「悲惨だ」地雷は言いました。


「わたしソ連兵が大っ嫌い」少女は言いました。


「わたしの知ったことじゃない」地雷は言いました。

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