第4話
凍てつく冬を越えて、甦[よみがえ]る春がきました。
「小麦がすくすくと成長しているよ」少女は屈みこんで言いました。
「それはなによりだ」地雷は言いました。
「ねえ、弟がかわいいの」少女は言いました。
「それはなによりだ」地雷は言いました。
「元気に成長しているよ」少女はうれしそうに言いました。
「武器を持たない男に育てろ」地雷ははっきりと言いました。
「ソ連兵が活動を再開したみたい」少女は膝頭にあごをのせました。
「関わるな!」地雷は激しく言いました。
「春はうれしいけど、戦闘が始まるから嫌だ」少女は言いました。
「悲惨だ」地雷は言いました。
「兄さんがムジャーヒディーンに参加するの」少女は言いました。
「やめておけ」地雷はむっとしました。
「父さんも姉さんも村の人達も、みんなみんな喜んでいるの」少女はさらに言いました。
「やめておけ」地雷はさらにむっとしました。
「わたしも兄さんがソ連兵と戦うのがうれしいの」少女は笑いました。
「地雷に気をつけろ」地雷は力をこめて言いました。
少女は地雷に腕を伸ばしてなでようとしました。
「さわるな!」地雷は怒鳴りました。
少女は笑いながら腕を引っ込めました。
「でも母さんだけは泣いているの」少女は言いました。
「わたしの知ったことじゃない」地雷は言いました。
「明日は親戚一同でピクニックに行くの」少女は目を大きく開きました。
「それはなによりだ」地雷は言いました。
「プラムの樹の下で食事するの」少女は言いました。
「戦闘機に気をつけろ」地雷は力をこめて言いました。
「明後日から兄さんとすこしの間お別れなの」少女は言いました。
「地雷に気をつけろ」地雷は力をこめて言いました。
「あなたも一緒に行く?」少女は訊ねました。
「わたしには必要ない」地雷は言いました。
「あなたにさわれたらいいのに」少女は言いました。
「考えたこともない」地雷は言いました。
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