七言八句漢柳「贈思婦」


花粉飄飄会嬋娟  花粉飄飄として嬋娟に会い、

鴛鴦泊乎結宿縁  鴛鴦泊乎として宿縁を結ぶ。

玄宗楊妃恨永訣  玄宗楊妃は永訣を恨み、

織女牽牛期一年  織女牽牛は一年を期す。

張切弛撓楽難成  張りて切れ弛みてたわむ 楽成り難し、

疎寛蜜立奏調絃  疎にして寛ぎ密にして立つ 奏でて絃を調う。

勿問遠近吾待君  遠近を問う勿れ 吾れ君を待つ、

固欲連綿紅糸顚  固より連綿たらんと欲す 紅糸の顚。



押韻 下平一先(娟、縁、年、絃、顚)


語釈

・嬋娟…上品で美しい女性。ここでは花のめしべを例える。

・鴛鴦…おしどり。

・泊乎…落ち着いて静かな様。

・宿縁…前世からの縁(仏教用語)。

・玄宗…玄宗皇帝。※人物の詳細については割愛

・楊妃…楊貴妃。

・永訣…死別のこと。

・織女牽牛…織姫と彦星。

・顚…天、頂き、あたま、先、末。


解釈

 花粉はふわふわと舞って離れためしべと出会い、

 オシドリは静かに落ち着いて良縁を結ぶ。

 玄宗皇帝と楊貴妃は死別を悲嘆し、

 織姫と彦星は一年の間を待ち侘びている。

(交際の距離感を楽器の弦に例えるに)張りすぎると切れてしまったり弛めすぎるとたわんでしまったりする。これでは音楽は成り立たない。

(その一方で)大らかにしてゆとりができたり厳密にして安定したりする場合もある。これを奏でてみると調和した音が鳴る。

(物理的な距離で)親密か疎遠かを気にすることはない。私はあなたを待っています。

 私は以前と変わらず連なり続けていたいと望んでいるのです。紅い糸の先の人よ。


解説

 前四句は雌雄男女の多様なあり様と行く末を説く。後四句は弦の張り具合を交際の距離感になぞらえる。

 同棲あるいは近距離で頻繁に会える関係、遠距離でなかなか会えない関係のどちらにしても、恋の行く末は誰にもわからないものである。だからどのような状況であれ、私はあなたを想っていますと説く。

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