川柳1句俳句1句「紫陽花」


「しようか」と

 違えし君に

「しようか?」と


 これは雨垂れがアジサイに垂るる梅雨の日の会話である。


「問題!これは何と読むでしょう?」

「ええっと何だったかな……しようか?」

「答えは、アジサイ」

「ああ!それだそれ!」

「ふふ……『しようか』ねぇ……」

「もう!思い出せなかっただけじゃん!」

「ねぇ」

「何よ?」

「しようか?」

「え?あ、ちょっと待って……あ……」


 ここで雨が強くなり、二人の声は聞こえなくなる。



一夜明け

雨後の紫陽花

色を増し


 朝になると雨は止んでいた。涼やかでさらりとした風が寝室を通り抜ける。

 とりあえず被っただけの状態の布団はむっとした熱気が満ちており、お互いの体にはしっとりと夜の余韻が残っている。暑苦しいが離れがたい。

 眠気を湛えた瞳には満ち足りた表情で寝息を立てる君が写っている。穏やかな姿を見ると夢でも見ていたのかと錯覚する。睦み合い、絡み合い、求め合い、貪り合い……情欲は日に日に増大して果てがない。夜を共にする度に色気が増しているようでつれあいとして喜ばしい限り。

 ぼんやりと障子の隙間に目をやると、軒下の紫陽花に水滴が溜まっているのが見えた。その瑞々しい艶姿を眺めている内に私は再び寝入ってしまうのだった。

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