短歌1首俳句1句「初春と令月」

アルプスの 春めく声に 誘われて

うつらうつらと 遠のく快音


 球春の到来、それは雪解けたアルプスに歓喜の声をもたらす。色とりどりの花が彩を為し、海からの風に身をそよがせる。

 裾野に広がる野原では青年達の勇壮な叫びを上げ、白球を懸命に追う。

「カキン」と快音が幾度となくこだまし、その一つ一つに人々は一喜一憂する。

 春の便りは津々浦々に届けられ、私はそれを見守りながらうたた寝する。

 



明くる世の 願い携え 月は駆け


 額に収められた次代のスイッチ

 それは人々に願うことを与えた


 人々の願いを抱えて月は駆ける

 欠けた体を願いで満たしながら


 無事に世が明けて安心した月は

 うっかり願いを落としてしまう


 ぽろぽろと体から願いがこぼれ

 月はすこしずつやせ細っていく


 星々は落ちゆく願いを拾おうと

 地の果てまで飛んで追いかける

 

 落とした願いを見失わないよう

 月はすっかり痩せた体を輝かす


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