短歌2首「花は散る」
散る花の 痛みなきやと 恐れども
君よ来たれと 切に乞う初夜
破瓜の不安を拭うように、あなたは優しく入念に私の身を撫でる。
触れるか触れないかの
たった一度の初めてを噛み締めるように慌てず騒がず……。私との今を大切に思ってくれていることが嬉しくて、もっと彼を感じたくなる。
体の緊張が少しずつ解け、温かい水の中でぷかぷかと浮いているような心地よさを覚える。こそばゆさが肌を走り、吐息が漏れる。脳内に彼の声が響く度に、体の奥底が熱を帯びる。
絶え間なく全身に流れる快感によって、再び体に力がこもる。行き場のない熱情をどうすることもできなくて、私はただ彼にしがみつくしかなかった。自分が自分でなくなるような恐怖、それも押し寄せる快楽の波に流されてしまう。
待って……ダメ……無理……。
それらを包みこむ「大丈夫」の一言、何度も何度も囁かれる甘い声音がついに私の理性を融解させる。
びりびりと頭の中が痺れ、意識が真っ白になる。体が無意識に震え、息が詰まる。そして恍惚が訪れる。
初めての絶頂……。私は果てる悦びを知ってしまった。
体の火照りは収まらず、下腹部がきゅんきゅんと頻りに何かを訴える。理性が溶け消えたことで雌としての本能が露わとなる。花からはじっとりと蜜が溢れ、雄を迎える準備は万端であった。
一匹のヒトとして全てを曝け出していることが恥ずかしくてたまらなかった。そんな私を慮って、彼はまた抱きしめてくれた。
「可愛いかったよ」
意地悪そうに呟かれたその言葉に耳まで赤くなった。でも彼にならこの姿を見られてもいいと思えた。
「ねえ」
抱き合った状態で私は彼に一言告げた。
「来て」
お腹に押しつけられた硬く熱いものに指先でそっと触れる。
奥まで深くつながりたい。そう思うと、このたくましい男の象徴も受け入れられる気がした。
散る花や 臆する君は 夜桜か
白地にまじる 朱やいとおし
すっかり潤んだ君の秘所に己の分身を突き下ろす。
痛みに耐えながら「大丈夫。きて」と君は乞う。
こまめに声をかけながらゆっくりと腰を沈めていく。奥へとかき進んでいく感触に下腹部がゾクゾクと反応する。
苦悶と快楽がないまぜになった喘ぎが暗闇に消える。根元まで咥えこんだことを確かめると、君は安堵の笑みを浮かべる。
「一つになれたね」
ここまで来るのは長かった。君に性なる禁断の果実を少しずつ分け与え、破瓜の不安を和らげることに努めてきた。そして僕たちはようやく結ばれた。
花を散らすことを恐れる君はまるで夜桜のようだった。
美しく、慎ましく、そして儚い……。
白昼に見せるあどけなさ、月夜に表れる妖艶さ、そのどちらも僕の心を揺り動かした。
君の柔肌とシーツに滴った赤い染みに、あの若干赤らんだ白い花びらが重なる。純白に混じる命の温もりを冷やさぬよう、僕は彼女を包みこむように抱きしめる。
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