短歌3首「門出」

浮き雲は 風と連れ合い 空歩む

寄り添う人の ありを喜ぶ


 私は空に浮かぶ雲を眺める。行く末の知れぬ彼らの旅路は風に押されることで前に進むことができる。人の生きる道も先の見えない旅路だが、共に寄り添い、背を押す者がいるから前に進むことができる。



旧友を 見かけ思わず 振る袖よ

躍る心に 草履急かされ


 彼女はめでたく門出を迎え、着飾った装いで出かける。そこで同じく門出を迎えた友人を見かける。互いに笑顔を弾けさせて腕を振って袖を揺らす。

 早く近くまで駆けつけたいけれども、慣れない格好なものだから足元が覚束ない。

 草履は急かされて焦る心を表すように、からんころんと音を鳴らす。



若人の 門出に立ちぬ 冬晴れの

日のまばゆきを レンズにたた


 成人式を迎え、記念写真を取る二人。気持ちのいい冬晴れが彼女らを祝福している。

 レンズの向こう側で笑顔が輝く。彼女らに射す陽光は明るい将来を示しているようだ。

 カメラを覗く者は「眩しいなぁ」と独り言を言う。そしていじらしく目をしばたたかせて涙をこらえるのであった。

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