川柳1句短歌1首「夢に見る君」
無意識に 君に似た人 求めては
まどろみの世界で知っているようで知らない人とすれ違う。
その人は知らない人のはずなのに、古くからの知己のような懐かしさを感じた。
「君は誰?」
「私のことわからないの? いつも一緒にいるじゃない」
いつも一緒? あぁ、そうだった。君か……いや、誰だ?
目の前に立つ謎の人物を見ていると、知らないはずなのに知っている気になってしまう。話し言葉は女のようだけど、見た目は輪郭がぼやけてよくわからない。僕の意識は男と認識しているようだけど、女のようにも感じる。夢の中の僕はその名前を呼んでいるようだけど、何と言っているのか聞き取れない。
誰だ? いつも一緒……?
俯瞰している僕がイメージを膨らませると、謎の人物は僕が知る人の姿に変化する。
あぁ、やっぱり君か……と思ったけど、それは君のようで君ではない人だった。記憶の断片が繋がり合ったモザイクのような歪さがあった。
夢の中の僕はそれを気にするでもなく、友人に接するかのようにその人とのひと時を過ごし、何事もなく僕は目覚める。
あれはおそらく僕の記憶が作りだした夢の住人。僕の知り合いの特徴が混ざり合って生まれた。だから知らないのに知っていると認識するし、強く想っている人の特徴が根強く反映されるのだ。
再びまみえた時、彼(彼女?)はまた違う人になりきっているかもしれない。
まどろみに 君と出会うも 言葉出ず
紡いだ時には 残夢となり
うつらうつら眠っている時に夢の中でかつての友と出会う。
ずっと言いたいことがあって、どうにか伝えようとするも言葉が出てこない。
背を向けてどこかに行こうとする君を追おうとするが上手く体が動かない。手足がずっしりと重くなり、足がもつれる。外に発すべきエネルギーが体内で根詰まっているようで、体がものすごく熱い。かすれ声で「おい! おい!」と叫ぶことしかできなかった。
ただただ呼び掛けることしかできぬまま夢から覚め、口から言葉を発した頃にはそれはすでに記憶の世界の出来事となっていた。
言葉は誰にも届かず、虚空に消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます