短歌1首俳句1句「事後詩」
淫ら夜の 喉の渇きを 潤すと
はだけし
こもった熱気を孕む夜、暑いのは熱帯夜のせいだけではない。
突き果てぬ快楽に嬌声を上げ続けたことですっかり喉が渇いてしまった。
気だるさと清々しさの混じった身をもぞもぞと起こす。服はとっ散らかってベットの下に落ちてしまっている。
今日はやけに激しかったな。何か嫌なことでもあったのだろうか。
隣で寝息を立てる彼を案じ、眠りを妨げないよう静かに床に降り立つ。そして、月明かりを頼りに落ちている寝巻の襟を摘まみ上げる。
外からのぬるい風もべたついた肌には心地良い。このすっかり火照った体では布を纏うことすら煩わしい気がした。
小声で「いっか」と呟いて、服を落とす。パサッと力無く落ちた抜け殻をよそに、私は軽やかにささやかに寝室を後にした。
事を終え 汗冷え寒し 秋の夜
一戦を交え、一息つく。二匹のヒトは生まれた姿のまま寝転がる。
布団は乱れ、衣服の所在もはっきりしない。肌にじっとりと汗が滴り、シーツを湿らせる。秋の夜長も二人の熱にかかれば熱帯夜だ。
「あっつい……」
男が暑さに敵わず身を離す。吐精後のやるせなさは普段できる気配りを疎かにさせる。
もちろん、余韻を楽しみたい女としては面白くない。構わず身を寄せようとするが、男にあしらわれてしまう。
「やだやだ」と甘える声は熱情と切なさの裏返しだということに男は気付いていない。
たまたまヒトの営みを見ていた月の女神が呆れ返る。見かねた彼女がふぅっと息を吐くと、それは秋風となって部屋に吹き込まれる。
「おおっさむっ……」
男は思わず布団を被り、女と身を寄せ合う。
女神は「これでよし」と頷くと、そそくさと雲の陰に隠れていった。
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