川柳1句短歌1首「日常」

雨垂れの 音に紛るる 盛り声


 パタパタと雨粒が窓を叩いている。生憎の天気だし、今日は家でゆっくりしようか。

「そうだね」と、君は返す。

「せっかくの休みだけど、たまにはこういうのも悪くないね」

 体を寄せて君は微笑む。うん、悪くないね。

 雨音に聞き入りつつ、彼女の頭を優しく撫でる。このままうたた寝でもしてしまいそうな程に、静かで穏やかな昼下がり。

 ぼんやりと君を撫でる手指は頭から耳、首筋、顎へと流れ落ちてゆく。それが心地良いのか、君は頭を子犬のように擦りつけてねだってくる。

 調子を良くした僕はしだいに肩や鎖骨にもさりげなく手を伸ばす。甘い声音で「ふふ、くすぐったいよ」と囁く辺り、満更でもなさそう。

「えい! 仕返し!」

 彼女の方も懐をくすぐってきたので、僕は負けじとやり返す。二人きりの時にしかできない甘ったるいじゃれあいに、お互いに息を切らす。

「はあ、はあ、ストップ……」

 クスクスと君と笑いあう。

「あー疲れた……」

 懐のこそばゆさが収まった瞬間、沈黙がふと訪れる。視線が絡み合い、互いの心が一致する。

「ん……」

 唇が自ずから触れ合い、淫靡な吐息が接触の隙間から漏れる。

 薄暗い部屋で始まった恋人達の夢を覆い隠すように、雨足が強くなった。



静けさや 草木も眠る 丑三つに

耳をすませば 聞こゆ艶声


 草叢の鳥虫も眠り、外はしんと静まり返っていた。

 カタカタと打鍵する僕の耳にくぐもった高音が入り込む。

 発情期の猫? 赤子の夜泣き? いや、それとは違う。

 耳を澄ます内にそれが何なのか何となく察した。今日は週末だし、そういうことなのだろう。

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