短歌1首川柳2句「変態」
風吹かば ガウチョに透ける 桃の実の
艶に見惚れて 足を留めん
前を行き交う女性の足を包むガウチョパンツがひらりひらりと風ではためいている。彼女達は体型を隠しているつもりだろうが、風に押され引っ張られた布地には豊満な桃の実としなやかな脚線美が映し出されている。
その無防備な後ろ姿を私は目で追い続ける。およそ男性には不評とされているが、それはこの魅力に気付いていないからではないのだろうかと思案する。
おじさんの 背中にあり得ぬ 下着線
暖かい日が増えだし、街を颯爽と行き交うビジネスマン達にもワイシャツ姿がぽつぽつと見られるようになった。私の前を歩く中年の会社員もさすがに暑かったのか、ジャケットを片手に職場に向かっているようだ。
ただ、そんな彼の背中には一般の男性ならあり得ぬ、肩から伸びる二本の縦線と胴回りを横切る太い線が存在した。おそらく彼は普段の感覚でジャケットを脱いだので、この現象に気付いていない。いや、表情が見えないからわからないだけで、もしかしたらわざと脱いで透ける羞恥や背徳感を楽しんでいるのかもしれない。
暑さによる汗とは異なる汗が背に流れるのを感じる。指摘するべきか否か、葛藤に脳内は支配され、その日の仕事のことなど吹き飛んでしまった。
「まじえろい 揺れるおっぱい 揉みたいな」と、性欲全盛の中学生でも作らない駄作川柳を僕はふと呟いた。そうすれば実現するような気がしたから。
脳内のエロス神が「それではダメだ」と嘆息を吐く。
季語になり得る言葉を入れよ。言うにしても、もう少し奥ゆかしい言い方があるだろう。二つの言葉にかかる動詞を入れると賢しく見えるぞ。
神の助言を頼りに僕は言葉をこねくり回す。
その末に一つの詩を成し遂げた。エロス神も「お前にしては及第点だろう」と認めてくれた。
この詩を僕の女神に披露したら「あなたってほんと馬鹿ね」と、呆れられた。
彼女はしょげる僕の手を取ると、それを自分の胸に持っていく。
そして、照れ臭そうに「こうしたいのならそう言いなさいよ」と囁いた。
エロス神が白い涙を流した。
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