川柳2句短歌4首「夏の思い出」

あわよくば 色の透けたる 白浴衣


解釈A

 今日は楽しみにしていたあの子との花火大会だ。

「あわよくば」という気持ちを抑えつつ紳士な振る舞いに努める。俺の三尺玉も打ち上げ時を今か今かと待ち侘びているぜ。

 白い浴衣の裾から伸びる肢体、首筋のうなじ、ふわっと香る髪の匂い、弾ける笑顔、全てが俺の欲望の琴線に触れる。もうどうにかなりそうだ。

 花火の打ち上げが終わって人ごみに流される。見過ごしようのない柔らかい感触を組み合った腕に感じつつ、俺達は無機質な電灯が並ぶ駅前の繁華街に辿り着いた。

 その時、偶然にも彼女が荷物を落とした。拾おうとして屈んだ際に自ずと臀部に視線が注がれる。

 そこには浴衣の下で彼女の秘宮を守る一枚の布が照明によってほんのりと透かされていた。俺の眼力が確かならば、それなりにオフェンスタイプのものだ。電灯が神の後光に見えた瞬間であった。

 俺の本当の花火大会が始まった。

 

解釈B

 今日は憧れの彼との花火デート。

「あわよくば」という気持ちを込めて今日は勝負下着を履いてきた。私の導火線もとうに着火寸前よ。

 白の浴衣姿に伸びる鼻の下、手汗で湿る掌、私の体を見る目つき、それを繕う表情、全てが私の目論見通り。もう今すぐにでも押し倒されたい。

 花火の打ち上げが終わって人ごみの中を彼にくっついていく。この機を逃さないよう無い物を必死に寄せて作り上げた胸を当てつつ、私達は煩雑な看板が並ぶ駅前の繁華街に辿り着いた。

 その時、偶然を装って荷物を落とした。拾おうとして屈んだ際にあえてお尻を彼の方に突き出した。

 そこには浴衣の下に秘めていた私の色情がまざまざと照らし出されていた。私の調査が確かならば、胸よりも尻フェチなタイプのはず。ハンターが狼の眼光と対峙した瞬間であった。

 私の本当の花火大会が始まった。



パンツの日 布地の先へ 夢求め


 8月2日に制作。それ以上の意味はない。



剃り痕に 彼を想いて 赤み撫で

浜辺にかける 初心うぶな患い


 学校の友達と海に行くことになった。その中には私が恋する彼もいる。

 楽しみだけど少し不安。だって彼に私の水着姿を見せるから。

 お腹の肉もそうだけど体を綺麗に仕上げなくちゃいけない。そう思うと、剃刀を押し当てる手に力が入った。

 赤らんだ脚を撫でる。こんな私を彼はどう見ているのだろう。

 浜辺で駆けあう彼と私……。

 ベタな妄想なのにどうしてときめくのだろう。

 初心な物思いに今宵も耽る。



身を結び 胸に伝うる 頬の熱

敷布の皺に 染みるくれない


 俺達は初めて結ばれた。

 かき抱く彼女の頬の熱が俺の胸板にじんわりと伝わる。俺は苦悶と快楽の狭間に揺れる彼女を強く抱きしめ、愛を打ちつける。

 もう離さない。

 ずっと一緒だ。

 くぐもった艶声を上げる彼女にこれでもかと言わんばかりに愛を囁く。返事はない。ただ、俺にしがみつく腕、俺のパトスを受け入れた秘器にきゅっと力がこもった気がした。

 シーツに染みと皺が刻みつけられていく。いずれも汗なのか唾液なのか互いの粘液なのか出所がはっきりしない。

 唯一わかるのは初めての証である赤い染みだけだ。



縁日の 花を眺むる 待ち人の

横顔にこそ 咲くと笑えり


 爛々と大きく輝く花……連鎖してたくさん咲く花……それを見て感動する花。

 


帯解き 覆いかぶさる 乳飲み子に

啼かされ続け 夜も眠れず


 私の衣を剥いで覆いかぶさるいけない子。

 付き合い始めから今に至るまでずっとこんな子。

 毎日は辛いから寝たいのに、

 上手に触って無視できない。

 快楽に身を委ねれば、

 寝入る頃には日は昇り。


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